漏斗胸・胸郭変形疾患でお悩みなら松山の漏斗胸専門病院

漏斗胸治療・再手術について

漏斗胸治療・再手術について

はじめに

漏斗胸再発(再陥凹)の手術適応は初回漏斗胸と同様胸部CTにて心臓及び肺の圧迫、更に肝臓の下方、後方への圧迫による胃の下方、後方への圧迫、更に上胸部の陥凹による肺への圧迫が適応となります。手術術式は筋層下Nuss法を用いて行います。
以前は胸骨飜転術や、飜転しない胸骨重畳を伴う胸郭再建術や、胸肋挙上術を用いていましたが、現在はほぼ全例に筋層下Nuss法を用いて行います。筋層下Nuss法は胸腔鏡を用いない術式です。
肺の臓側胸膜と胸郭の壁側胸膜の癒着があっても、指で剥離しながら行いますので、以前に胸肋挙上術や胸骨飜転術、Nuss原法による漏斗胸手術を受けた方でも施行可能です。筋層下Nuss法を用いることで初回手術と同様の筋層下Nuss法が行い得ます。
当院では、他院でNuss法原法による再手術を試み、陥凹が改善しなかった人も来院し、当院で筋層下Nuss法を受け、再陥凹は改善しました。

患者さんのバックグラウンドと術後経過

本症例はNuss法原法による再手術による改善が不可能でありましたが、筋層下Nuss法を行うことで確実な術後の改善が得られると考えて、当院で筋層下Nuss法による再手術を受けた方の手術を紹介します。
この患者さんは以前15歳時にRavitch法による漏斗胸手術を受けた後、18歳時にNuss法Ⅰ期的手術にてバーを挿入し、21歳時にバー抜去術を施行されています。しかしながら、術後も陥凹が治らず、33歳で当院初診し、手術日を話し合って初診後約2ヶ月目に当院にて筋層下Nuss法を受けました。術後の回復は順調であり、術後5日目にドレーンを抜去し、術後9日目に退院して、当院の基本通り松山に2泊して頂いた後外来受診し、その日の夕方には帰宅の途につきました。

手術記録

皮膚・皮下組織・筋層の切開

気管内挿管・全身麻酔下に仰臥位をとっています。右側は第6肋骨上に、左側は第6肋骨上に肋骨走行に平行な 2.5 ~ 3.0 cmの皮切を加え、皮膚・皮下組織・筋層を切開し、この切開創を筋層にて第6肋骨走行に応じて、上下に延長しました。両側第6肋骨の背側方向にポケットを拡げ、次いで第6肋骨・肋間筋上より前方に向けてポケットを拡げました。左右とも第4肋間・第5肋間にて開胸し、第4肋間に術者第3指を挿入しました。前縦隔疎性結合組織を術者第3指にて剥離し、第4肋間に左創部よりケリー鉗子を挿入し、右創部より挿入した術者第3指と合致した後に、術者第3指とケリー鉗子で前縦隔疎性結合組織を穿破した後、胸腔内でケリー鉗子にてテープを左創部に導きました。テープに胸骨挙上用バー( 31 cm)を結紮し、右創部より左創部に導きました。その後、ヨット用シャックル・鎖・カラビナでエンジンジャッキに接続し前胸部挙上を行いました。

前胸壁の陥凹の解除

左創部にてバーにテープを結紮し、右創部にバーを抜去しました。テープも共に抜去しました。第5肋間に術者第3指を挿入しました。前縦隔疎性結合組織を術者第3指にて剥離し、第5肋間に左創部よりケリー鉗子を挿入し、右創部より挿入した術者第3指と合致した後、術者第3指とケリー鉗子で前縦隔疎性結合組織を穿破した後、右創部よりケリー鉗子にて右胸腔内でテープを把持し、テープを左創部に導きました。胸骨挙上用バー( 31 cm)をテープに結紮し、右創部より左創部にテープにて導きました。その後、ヨット用シャックル・鎖・カラビナでエンジンジャッキに接続し、前胸壁挙上を行いました。左創部にてバーにテープを結紮し、右創部にバーを抜去しました。このテープで前もって形成したしたソルブ社製バー( 31 cm)を右創部から左創部まで導きました。左右創部よりペクタスクランプにてバーを180度回転させ、前胸壁の陥凹を解除しました。この時先端曲のラジオペンチとタインガン テープを上手く操る事により、まず右創部のポケットの中にバーを入れた後、次いで左創部の中にバーを収納しました。

第6、第7肋骨の結紮固定

両側の第6、第7肋骨にバーをそれぞれ2本の強固な手術用の糸で結紮固定しました。次いで、左創部より第4肋間にケリー鉗子を挿入し、右創部よりケリー鉗子にて右胸腔内でテープを把持し、テープを左創部に導きました。右創部にて前もって形成したしたバー( 31 cm)をテープに結紮し、右創部よりバーを左創部まで導きました。第5肋間のバーは上方に滑っていたので、第4肋間のバーと同じ高さになってしまいました。左創部にてテープをバーに結紮し、右創部にバーを抜去しました。第5肋間のバーの固定糸を外し、バー左右端を創外に取り出し、ペクタスクランプで180度回転させました。左創部でテープをバーに結紮し、右創部よりバーを抜去しました。左創部より第4肋間にケリー鉗子を挿入し、右胸腔内でケリー鉗子にて先程抜去した第4肋間用バー付きテープを左創部に導きました。右及び左右創部よりペクタスクランプにてバーを180度回転させ、前胸壁の陥凹を解除しました。この時先端曲のラジオペンチとタインガン テープを上手く操る事により、まず右創部のポケットの中にバーを入れた後、次いで左創部の中にバーを収納しました。
両側の第5、第6肋骨にバーをそれぞれ2本の強固な手術用の糸で結紮固定しました。左創部より第5肋間にケリー鉗子を挿入し、ケリー鉗子にて右胸腔内で第5肋間バーの付着したテープを把持し、テープを右創部に導きました。左右創部よりペクタスクランプにてバーを180度回転させ、前胸壁の陥凹を解除しました。この時先端曲のラジオペンチとタインガン テープを上手く操る事により、まず右創部のポケットの中にバーを入れた後、次いで左創部の中にバーを収納しました。両側の第6、第7肋骨にバーをそれぞれ2本の強固な手術用の糸で結紮固定しました。胸腔内及び筋層下を兼ねた5mm径S.B. Vac drainage tubeを留置した後、筋層・皮下組織・皮膚を縫合して手術を終えました。

手術の詳説

前回手術とバーを挿入する肋間の違うことから、右側皮膚切開は初回より若干下方の側胸部に 2.5 cmの皮膚切開を新たに行い、左側は前回の皮膚切開創を前方に 3 mm延長して、この部位より前方に大胸筋を、後方に前鋸筋を肋骨、肋間筋より剥離し、比較的胸骨に近い肋間筋を約 1.5 cm×肋間幅切除して、左右胸腔を開胸しました。
手術記録にもありますように、再手術例でも勿論胸骨挙上用バーを最初に挿入して、エンジンジャッキでヨット用シャックルと鎖と登山用カラビナを用いてカラビナでエンジンジャッキに接続した後、電動式手術用ベッドを加工させることにより前胸壁挙上を行い、胸骨、肋軟骨関節、肋軟骨、肋骨接合部を骨折させます。基本的に前回手術よりも肋軟骨が脆くなっている為に初回手術よりも再手術のほうが容易に行うことが出来ます。初回に行う筋層下Nuss法と同様の経過で20歳以下の場合は2年後に20歳以上の場合は3年後にバーを抜去し、抜去後の術後形態も良好でありました。
再手術時の所見としては、Nuss法術後1年以上経っていれば癒着は少ないのです。癒着部位は殆どの場合、術者の指先やガーゼを用いることで、癒着を剥離出来ます。術後、臓則胸膜を傷つけることによって起こる気胸については、術後に陰圧持続吸引器を用いることにより術後3日目くらいまでに改善します。当院では初回手術、再手術共に全例胸腔内及び筋層下を兼ねたドレーンチューブを留置しています。直径 5 mmのドレーンを左右の肋骨弓辺りから引き出しています。
再手術時にはしばしば術後気胸を認めますが、初回手術後漏斗胸に合併する肺尖部、肺嚢胞症が破裂する為に、術後気胸を認めることがあります。当院では術後ドレーンを全例留置していることにより、術後にきたした気胸は陰圧持続吸引器に接続するだけで改善が得られます。

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