漏斗胸・胸郭変形疾患でお悩みなら松山の漏斗胸専門病院

みんなの教科書『胸郭変形』

胸郭変形

※一部グロテスクな表現のある画像があります。
心臓の弱い方は注意して御覧ください。

1. 発生

a. 肋骨の正常発生

受精した卵は8日目には羊膜腔(amniotic cavity)と原子卵期嚢(primitive yolk sac)の間で胚盤(embryonic disc)となる。この胚盤は2層からなり羊膜に面した円柱細胞からなる外胚板と胚性内胚葉(embryonic endoderm)の立方細胞からなる内胚板である。この頃には胚子(embryo)は完全に子宮内膜に埋蔵され着床が完了している。
15日頃になると外胚板が線状に肥厚し、原始線条として胚盤背側正中線上の尾方に出現する。原始線条がその尾方部分の細胞増殖によって長くなるにつれ、その頭方の端が肥厚して原始結節(primitive knot)を形成する。同じ頃原始線条の中に狭い原始溝(primitive groove)ができ、いずれは原始窩(primitive pit)と呼ばれる原始結節の窩部に続くようになる。16日目頃には外胚板細胞が原始線上に向かって移動し始め原始溝に入っていく。さらに原始溝の基底層を去って胚性外胚葉と内胚葉の間に入り胚内中胚葉を形成する。胚内中胚葉は間葉細胞(mesenchymal cell)となり線維芽細胞(fibroblast)、軟骨芽細胞(chondroblast)、骨芽細胞(osteoblast)に分化していく。
この3週目にはそのほか体腔の形成や、心臓の原基となる原始内皮性心筒(primitive en-dotherial heart tubega)が右左一対形成される。脊索の両側にある中胚葉は肥厚して沿軸中胚は頭側から分節し始め大節の形成が始まる。
胚子期(embryonic period)(4~8週)にはすべての主要な器官の初期発生が起こるので催奇形因子にさらされると先天性奇形が起こる可能性が強い。胚子期には頭屈(head fold)と尾屈(tail fold)を生じ、さらに横の面では側屈(lateral fold)を生ずる。両側の体側の体側壁あるいは壁側板(somatopleure)は正中線に向かって折り込まれほぼ円筒形をした胚子が形成される。
体節は26日目頃には筋板とその内側の椎板とに分かれ第5週には前軟骨(間葉性)脊椎を形成する。この脊椎の肋骨突起は中胚葉進展に伴って外側に進み、胎生6週には頭側部は正中に達し胸骨の原基と結合する。第7週頃には中胚葉のほとんどは外肋間筋、内肋間筋さらに内層の胸横筋の3つに分かたれる。
肋骨の第1および11、12を除いてそれぞれ4つの骨化中心をもつ、1次骨化中心は胎生2か月に第6、第7肋骨の肋骨角付近に出現する。2次骨化中心は肋骨頭に残り2つの2次骨化中心は肋骨結節の関節面と非関節面にあり、肋骨頭と肋骨結節の骨端は生後16年から20年で骨化が始まり25年頃肋骨体と癒合する。

b. 胸骨の正常発生

 間葉性胸骨の起源ははっきりとわかってはいない。胎生6週では広く離れた一対の間葉性胸骨帯(mesenchimal sternal band)が肋骨の発生とは無関係に体壁の腹側に発生する。ほとんどすぐに軟骨化し外側では肋骨端と癒合し、第7週のうちに左右の胸骨帯は頭側より尾側に向かい正中線で癒合し9~10週には癒合が完成する。
軟骨化した肋骨は初め分割されていないが、後になり柄(manububrium)、体(body)、剣状突起(xiphoid process)に分割される。骨化中心は出生前に頭側から尾側に向かって現われ出生時には剣状突起を除いた部位に数個あるのが普通である。骨化の時期は柄と胸骨体頭側は生後6か月において起こる。胸骨体中央部は7か月時に尾側は1年、剣状突起では5~18歳に化骨する。

c. 漏斗胸、鳩胸の発生

漏斗胸の病因に関しては古くから多くの学説がみられるが、要約すると①横隔膜の形成異常、②気道の異常による胸腔内の低下となる。また古くは③クル病をはじめとする栄養障害が原因と信じられていたこともあった。
横隔膜の形成異常は現在もなお信じられている。横隔膜の中心腱膜がなにかの理由によって短縮し、それより前方の筋組織の発育の障害をきたす。このため横隔膜前部が付着する胸骨および肋骨が後方に引張られて陥凹する。中央部に強い陥凹をもつ症例では胸骨下靱帯の関与が考えられ、胸骨下靱帯が肥厚し強く張っている。広くて浅い陥凹を呈する症例では前側方の横隔膜が短縮し下部の肋骨の変形が著しくなるとされている。
上気道の閉塞は臨床的な観察によるものである。漏斗胸患者は上気道をしばしば繰り返したり、またアデノイド、扁桃腺肥大を合併する頻度が高い。気管支喘息を合併する症例も多く上気道炎とともに漏斗胸の診察の上で重要なポイントとなっている。最近でもこの上気道の閉塞が漏斗胸の原因とする報告があり、心不全と呼吸不全を伴っていた。このような心肺不全の幼児期の症例では高い頻度で(10%)漏斗胸が認められるという。またこれらの症例では扁桃摘出、アデノイドの切除を行なうことによって漏斗胸を改善したとしている。
現在においてはクル病などの栄養障害による疾患はきわめてまれであり、また古い統計と最近の統計との比較で漏斗胸の発生頻度はあまり変わらない。このことから考えても栄養障害説には信じがたい点が多い。
これら①②の説はいずれも否定的な材料が多い。②の上気道の閉塞説は非常に微妙である。上気道の閉塞によって胸骨が呼気時にもっとも陥凹するのは漏斗胸の最陥凹部と同じ剣状突起の部分である。横隔膜は胸腔内の陰圧に対して肺実質を拡張させるが、正常の状態では5~10cmH2O程度の力である。幼児期の胸郭が弾性に富むとはいってもこれだけの力で胸骨や肋骨の変形をきたすとは考えにくい。またこの説では非対称性漏斗胸で一側が強い陥凹をきたし、またもう一方で突起しているタイプの症例はまったく説明することができない。
横隔膜の低形成が原因とすれば、強い力で胸骨や前部肋骨を横隔膜が牽引しているはずである。したがって横隔膜中央部は胸椎から真直ぐに胸骨に伸びていなければならない。すなわち横隔膜の正常なドーム型はなくなってしまうはずである。しかし漏斗胸患者でもそのような現象はなく正常の横隔膜のドーム型は維持されている。また一時期にしてもそういう現象があるとすれば、心嚢は横隔膜に固定されているから漏斗胸患者に認められる心臓の左胸腔内への偏位は不可能になる。しかし一般に強度の陥凹のある症例ほど心臓の左方偏位は強い。
漏斗胸と鳩胸は多くの点で類似疾患と考えられる。前にも述べた非対称性漏斗胸で右側に強い陥凹が認められ左側が突起し胸骨が棙れている症例は、漏斗胸と鳩胸の同時に現れたものといえる。Pouter pigeon chest と呼ばれる一群の症例は胸骨柄を中心とする上胸部の著明な突出と胸骨体部の急峻な陥凹が特徴であるが、この群でも突起と陥凹が混在している。
またなによりも漏斗胸と鳩胸の類似性を表しているのは、同一の家系の中で両者の発生である。われわれは多くの症例で家族内発生を認めているがその例を図Ⅰ-1に示した。また幼児期に鳩胸を呈した患者が成長するに従って漏斗胸になったという報告もある。このような根拠から両疾患が同一の原因によって生ずると考えている研究者も多い。一般的にいって漏斗胸患者も鳩胸患者も肋骨の横軸は短く細長いのが特徴である。典型的な漏斗胸と鳩胸の形態状の共通点は肋軟骨の過剰な発育にあり、Marfan症候群に漏斗胸あるいは鳩胸の合併が多く認められるのも、この過剰発育説を裏づける証拠の1つになろう(図Ⅰ-2)。
図Ⅰ-3は典型的な漏斗胸、鳩胸と正常の胸郭のCT像の比較である。漏斗胸は陥凹部が胸骨を頂点とした三角形を呈しており、この胸骨をはさむ2辺の和は底辺より長い。すなわち漏斗胸の胸壁は正常な胸壁より長い周をもっている。胸部X線では漏斗胸の肋骨は前胸部では斜走傾向が著しく正常に比較すると長い肋骨であることがわかる(図Ⅰ-4)。キール型の鳩胸でも漏斗胸と同様に胸壁そのものも正常に比較して長く、肋骨も延長している。
この2つの疾患が類縁の疾患であるとすれば、前胸部の突出する鳩胸と陥凹する漏斗胸は第2のメカニズムによってその形が決定されることになる。これが前に述べた①②が漏斗胸の原因となり、内側に前胸部が引張られない場合には鳩胸となる可能性は高い。(貝塚秀樹・長柄英男)

2. 遺伝

漏斗胸は遺伝性疾患といわれている1.2)。
今回30人の漏斗胸患者およびその家族に可能なかぎり詳細に問診を行ない、家族歴について検討を加えた。患者は出生時あるいは幼児期に前胸部の陥凹に気づかれている。軽度のものは出生時には気づかれないこともあるが年を経るに従ってはっきりとしてくる。ほとんどすべての漏斗胸患者は出生時に発症していると考えられる。漏斗胸発生頻度はわが国では0.13~0.7%といわれており、その男女比は3~4:1と男性に多い。漏斗胸の発生原因は肋骨の過成長と考えられ過成長により前胸部が陥凹したものが漏斗胸であり、突出したものが鳩胸と考えられる。今回の検査でも家族歴に鳩胸を認めており、その発生は同一のものであると考えられた。今回検討を行った30家族のうち家族歴に漏斗胸あるいは鳩胸を認めたものは16家族53.3%であった。患者の性別では男性24人、女性6人であった。16例の家族歴をまとめたものを表Ⅰ-1に示す。
16例の家族歴で漏斗胸患者が21人、鳩胸が6人、全体で27人であった。漏斗胸、鳩胸は法則性をもって出現せず混在していた。(図Ⅰ-5)。
図Ⅰ-5
男女比では27人中性別不明のものが3人おり、24人中男性17人、女性7人であった。また家族歴に胸部変形を認めないものはすべて男性の患者であった。これは男性、女性同様の遺伝因子を保持していてもそれが男性に出現しやすいか、もしくは女性は発現しても軽度で気づかれないことがあるのかもしれない。
父または母に胸部変形を認めるものは5例であり1例は両親ともさらに祖父にも認めている(図Ⅰ-6)。
図Ⅰ-6
この症例は2人兄弟でともに漏斗胸であった。父系および母系についてみると16例中15例はどりらか1家族に疾患があり、1例のみが両家系に存在した。この症例は先ほど示した(図Ⅰ-6)症例であり、両家系に遺伝因子をもつと高頻度に出現してくる。兄弟発生は3例あり(図Ⅰ-7)、1例は父母および祖父に漏斗胸を、1例は祖母に鳩胸を、1例は他に変形を認めていない。家系では父系7、母系6と優位性は認めない。
図Ⅰ-7
漏斗胸が遺伝性疾患であることが1872年Williamsにより報告されてから多くの報告がなされているが、その遺伝形式については意見の一致をみていない。単一遺伝子によるメンデル法則に従った優性遺伝とするものや多因子遺伝のモデルに従うとするものがある。今回の検討においても家族で漏斗胸および鳩胸を伴うものが53.3%あり、遺伝的要因が関与していることはまちがいのないところだが、その遺伝形式についてはむずかしかった。家族歴の聴取にあたり軽度のものは気づかれないことも見逃している可能性もある。しかし、ごく軽度のもの、扁平胸、straight back syndrome など大きく胸郭変形疾患をとらえた場合、かなり高頻度に家族発生を認めるという感がある。 

3. 染色体

漏斗胸についての遺伝学的アプローチとしては、家系調査による統計遺伝学的分析、細胞遺伝学的染色体検査、HLA typingなどがある。本疾患の遺伝形式としては、常染色体優性遺伝とする者が多い。
一方、染色体検査については、現在まで種々の染色体分染法の工夫がなされ、細胞工学の導入によってヒト染色体のマッピングもしだいに詳細に行われるようになってきている3)。遺伝性疾患に対してその患者の染色体上への標識がなされ、染色体と遺伝子との対応が解明され始めている4)。
染色体分染法にはQバンド、Gバンド、Rバンド、Cバンドなど種々の方法がある4)。当科においては、これらのうちGバンド分染法を用いている。
1985年3月より同8月までの間に12症例に対し施行したGバンド分染法のうち、とくに家族歴の濃厚であった2例を呈示する(図Ⅰ-8、Ⅰ-9)。
図Ⅰ-9
これらの12例はいずれも正常所見であった。
染色体異常のある種々の疾患のうちで、漏斗胸を伴ったものは比較的多いとされている。逆に漏斗胸は、次のような染色体異常を示唆する臨床症候の1つであるともいえる。それらは、4q-、7q-、+8q、18p-、+21である3.4)。これらのうち、現在までのところ有名なものにDown症候群がある。本疾患は、漏斗胸以外の他の多くの臨床症状、たとえばほぼ必発するとされる知能障害、特有の顔貌などにより、染色体検査以前に診断が可能である。漏斗胸のみが高度な症例において、染色体異常の存在する可能性も否定できない。しかしながら、当科における漏斗胸患者中いまだそのような症例は見出されていない。
染色体異常は受精卵の段階ですでに発生しているわけで、この点から染色体異常を伴う疾患では多系統の器官に異常が発現する可能性が大きく、単一器官にのみ発生する可能性は低いと考えられる7)。
最近染色体分染法の進歩はめざましく、上述の各分染法のほかに、高精度Gバンド分染法が開発されてきた。この方法によれば、mid-metaphaseで395、pro-metaphaseで750、late-prophaseでは1,100以上の多数にわたるバンドが分染される6)。ヒトで機能する遺伝子の数を約5万個と仮定すると、1,000のバンドがあればその1つ1つに40個の遺伝子が対応することになり3)、従来までの分染法に比べ、はるかに精密度が増してきている。このように、分子レベルでの遺伝機構を、光学顕微鏡下に観察できるのが染色体分染法の魅力であり、今後この高精度分染法が日常臨床において使用可能となれば、漏斗胸単独の症例に対してもなんらかの染色体異常を指摘できる可能性がある。
以上のような染色体分染法のほかに、第6番目の染色体に存在するHLAのタイピングによる方法もある。強直性脊髄炎をはじめHLAとの相関を指摘されている疾患は多い。胸郭変形疾患としては漏斗胸と近縁関係にあるとされるstraight back syndromeとHLAの相関を指摘する報告もあり7)、この方法もまだ試みる価値があると思われる。 

4. 体型

 漏斗胸患者は一般に長身、やせ型、扁平胸などの特徴をもち、洋服をぬがなくとも、おおよそ漏斗胸の診断ができることも多い。
漏斗胸患者が正常人と比し、どのくらい長身、やせ型なのか、文献的報告はないので、ここにわれわれの統計をまとめた。

a. 対象と結果

昭和58年から59年10月までの間に、当科の手術をした漏斗胸203例について、その身長、体重を測定し、正常人と比較した。
患者は男154例、女49例、性比は1:0.24である。男は3歳から53歳までで、20歳以上が21例(13%)であった。女は3歳から35歳までで、20歳以上が10例(20%)であった。
比較の正常値には、国民栄養の現状(厚生省)の昭和58年における値を用いた。
男子の身長は、成人例では漏斗胸(以下RC)が正常人より高いが、15歳以下では有意な差は認められない(図Ⅰ-10、表Ⅰ-2)。
男子の体重はほぼ全年齢において最大9kg、FCは正常に比して軽い(図Ⅰ-11、表Ⅰ-3)。
図Ⅰ-10、Ⅰ-11
女子の身長は全年齢で、FCは正常と等しいか長身である(図Ⅰ-12、表Ⅰ-4)。
女子の体重は、FCは正常より少なく、その差は思春期以降増大傾向がある(図Ⅰ-13、表Ⅰ-5)。
また、幼児期の体型、発育の示標として用いられるKaup-Davenport index、学童期以降で用いられるRohrer indexを比較した。なお、Kaup-Davenport index=W/L2、Rohrer index=W/L3であるが、Wは体重、Lは身長を表している。
Kaup indexは3~7歳の患者に、Rohrer indexは6歳以降の患者に適応した。
男女とも、ほぼすべての年齢でFCは正常に比し小さな値を示し、その差は幼児期にすでに存在し、年齢とともに大きくなる傾向がある(図Ⅰ-14~Ⅰ-16)
図Ⅰ-12、Ⅰ-13

b. 考案

FCと正常人の身長、体重を比較すると、男女ともにFCに身長、痩軀の傾向があり、その差は年齢とともに、とくに思春期以降大きくなってくる。
また、体型の示標として用いられてるKaup index、Rohrer indexを比較するとFCの体型の特徴は明らかになる。すなわち、3歳時には、FCは正常人に比し痩身でありその傾向は年齢とともに強くなる。
これらのことよりFCは単なる前胸部の変形という局所的な異常ではなく、全身の先天異常の一表現型として前胸部変形が現われたものということが示唆される。
また、同様の長身、痩軀を呈するMarfan症候群との関連も考えられる。
図Ⅰ-14~Ⅰ-16

c. まとめ

(1)FCは男女とも幼児期より正常人に比し、長身、痩軀であり、その傾向は年齢とともに大きくなる。
(2)このことによりFCは、単に前胸部にかぎった先天異常ではなく、全身の発育の異常の一症状として前胸部変形が現われたものと考えることができる。

5. 胸部X線像

漏斗胸は胸郭全体の変形をきたす疾患のため胸部X線上いくつかの特徴的な所見を有している。これらの所見は、術前では手術の適応などを決定するうえで、術後では経過観察を知るうえで重要なものとなっている。
胸部X線像上の特徴は骨性胸郭自体の異常による所見と、その結果生じる胸腔内蔵器の変化による所見とに分けて考えられる。
骨性胸郭自体の異常としては、脊柱側彎症、straight back syndrome、胸骨柄部の変形、胸骨体部の陥凹、胸郭の左右不対称、前肋骨の走行異常などが認められる。
胸郭変形による心および肺の圧迫所見としては、右心陰影の消失、心陰影全体の左方への突出、肺紋理の増強などが認められる。

図Ⅰ-17
図Ⅰ-18

a. 胸部4方向写真(図Ⅰ-17、Ⅰ-18)

 典型的な右優位型Ⅲ度漏斗胸症例(7歳、男)を示す。
1) 背腹写真
背腹写真は左右の対称性を知るのにもっとも適している。この写真は矢印方向に対し正しく撮影されているのにもかかわらず、左右の胸部の不対称が著明である。左の前肋骨に対し右の前肋骨の走行は前下方に偏位している。肋間の広さは左右異なり、右の各肋間の広さも不ぞろいとなっている。脊椎は右へ凸の側彎を示している。右の肺紋理は著明に増強してみられるが、これは肺への血流の増加によるものではなく、この部位での胸壁の前後径の減少によるものと考えられる。また同様に前胸壁の陥凹により心臓の左方への偏位が生じ、右心陰影は消失し、心陰影全体が左方へ突出している。
これらの所見の手術による変化を術後早期では胸郭の左右対称性、左右前肋骨の走行の正常化、各肋間の広さの均等性をみることにより手術の結果を知ることができる。また術後長期では、心臓への圧迫の解除による心陰影の正常化、右心陰影の出現、肺への圧迫の解除による肺紋理の減少などにより改善過程を知ることができる。
2) 側面写真
側面写真では、胸骨、肋骨、脊椎の異常がよく観察できる。胸骨は柄部から陥凹しており、体部の変形は著明である。
肋骨は左右が重なることにより走行の差が明らかに観察される。この症例においてはみられないが、straight back syndromeはしばしば認められている。
心陰影は陥凹した胸骨の前方まで存在し、肺血管陰影は狭い前後径の中に集中して認められる。
3) 第1斜位
骨性胸郭の観察に適した撮影であるが前肋骨の左右差は確認しにくい。
心陰影は左方に偏位して認める。気管気管支の管状陰影には異常を認めない。
4) 第Ⅱ斜位
骨性胸郭に関しては第Ⅰ斜位と同様である。漏斗胸では異常を認めることがある左気管支がよく観察されるが、この症例では異常を認めていない。

b. 漏斗胸1度から4度の胸部X線像

1)漏斗胸1度(図Ⅰ-19)
背腹写真では、軽度の左右の胸郭の不対称を認める。左の前肋骨に対し右の前肋骨はやや前下方に偏位した走行を成し、右側の各肋骨の広さは不ぞろいである。脊椎には異常を認めていない。心陰影はほぼ正常に近く、右心陰影もはっきりとみえている。
図Ⅰ-19
図Ⅰ-20
側面写真では胸骨柄部はほぼ正常であるが、胸骨体部は扁平となっている。肋骨の走行は若干の左右差を認めているが、脊椎には正常を認めていない。心陰影は扁平な胸骨により軽度の圧迫を受けているが、肺血管陰影には異常を認めていない。このような症例の場合、心および肺の圧迫所見は軽度のため、手術の適応とはせず経過観察としている。
2)漏斗胸Ⅱ度(図Ⅰ-20)
Ⅱ度となると背腹写真上胸郭の左右差が明らかとなってくる。右前肋骨は前下方に斜走し、各肋間の不ぞろいも明らかとなっている。
脊椎には異常を認めていない。心陰影は左方に突出し、右心陰影も認めず、肺紋理の増強が観察される。
側面写真では、胸骨柄部から胸骨体部にかけて軽度の陥凹を認め、肋骨の走行には左右差が観察されている。心陰影は陥凹した胸骨のやや前面まで存在しているが、肺血管陰影はほぼ正常である。これらの所見より、この症例のようにⅡ度の漏斗胸でも心および肺の圧迫が認められるなら手術の適応となる。
3)漏斗胸Ⅲ度(図Ⅰ-21)
背腹写真と胸郭の左右差は著明で、右前肋骨の走行および肋骨の不均等は著明となっている。脊椎はstraight back を呈している。両側の肺紋理に著明に増強し、右心陰影はまったく認めず、心陰影は左方に突出している。
図Ⅰ-21〜Ⅰ-22
図Ⅰ-23
側面写真では、胸骨の陥凹はさらに著明となっている。
4)漏斗胸Ⅳ度(図Ⅰ-22)
胸郭の左右不対称はさらに明らかとなり、右前肋骨の前下方への走行や各肋間の不均等は著しい。心陰影は著しく左方へ偏位し、左側胸壁と接している。側面写真では、胸骨後面と脊椎はほとんど接している状態となっている。

c. Marfan症候群における漏斗胸

Marfan症候群は、水晶体脱臼などの眼症状、解離性大動脈瘤や弁膜症などの心血管系の症状およびクモ状趾などの骨症状を主とする疾患である。高率に胸郭の異常も合併し、その中でも漏斗胸がもっとも多い。Marfan症候群における漏斗胸の胸部X線像は、漏斗胸における胸部X線像上の特徴を増悪した形となっている(図Ⅰ-23、Ⅰ-24)。

d. その他胸郭変形疾患の胸部X線像

1)pouter-pigeon breast(図Ⅰ-25)
背腹写真上はほとんど異常を認めていないか、側面写真では胸骨柄部の軽度の突出と胸骨体部の下部に陥凹を認めている。
図Ⅰ-24〜25
図Ⅰ-26〜27

2)pigeon chest(図Ⅰ-26)
この症例のpigeon chestはMarfan症候群に合併したものである。背腹写真ではMarfan症候群の特徴的な所見を認めている。側面写真では胸骨体部の突出がみられる。
3)keeled breast(図Ⅰ-27)
背腹写真上では胸部の軽度の左右差を認めるだけであるが、側面写真では胸骨柄部の著明な突出を認めている。

e. 他疾患を合併した漏斗胸症例の胸部X線像

1)漏斗胸Ⅱ度、巨大肺嚢胞および右胸心の合併(図Ⅰ-28)
背腹写真では、漏斗胸の所見のほかに、左下肺野の肺血管陰影の消失、左肺の上方への圧排、右胸心を認める。側面写真上も左肺の上方への圧排を認めている。
2)漏斗胸Ⅲ度、prune belly症候群および右胸心の合併(図Ⅰ-29)
胸部X線写真上では、漏斗胸の所見と右胸心を認めている。この症例は腹筋の欠損を伴うprune belly症候群であった。

3)漏斗胸Ⅲ度と左自然気胸の合併(図Ⅰ-30)
背腹写真では、漏斗胸の所見のほかに左肺の完全な虚脱を認める。この症例では漏斗胸および自然気胸に対する合併手術が行われた。 

6. 心音

胸骨、肋骨の変形に起因する胸郭の変形は、所見から一見して明らかなため、古くから記載があるが、詳細なことは19世紀の後半に至るまで報告されてきていない。
胸郭の変形、胸郭異常、極端な滴状心、脊柱側彎症あるいは胸椎後彎消失(straight back syndrome)などでは、心基部ならびに肺動脈領域で著明な収縮期雑音が認められることが知られている8~19)。胸郭変形の中でもっとも多くみられる陥凹性変形である漏斗胸における収縮期雑音はその代表的なものであり、しばしば心疾患と誤られることがあるので、注意を要する。

a. 心雑音の成因

 漏斗胸における心音異常および雑音の発生起因についてはさまざまな報告があるが、
(1) 胸腔の立体的な偏位による心臓の直接的圧迫ならびに胸部単純X線写真、心血管造影、心電図などで示されるように、心臓の左側への偏位と回旋による心血管系の屈曲ないしは伸展によるもの。
(2) 胸郭変形、脊椎彎曲異常などによる胸郭、肺の拡張不全、それに伴う代償性肺気腫形成などによる2次性肺性心による右心負荷によるもの。
などが考えられている。

b. 頻度

漏斗胸患者における心音異常ないしは心雑音は、ごく普通に認められる所見で、Myhre11)(1955)52%、和田寿郎16)(1976)56%、Wachtelら12)(1956)57%、SchanbとWegmann17)(1954)57%、Masterら8)(1949)60%、Ernberg9)(1951)69%と50~70%に認められると報告にもかなりの差が認められるが、われわれの教室においては1984年度1年間に経験した231例の漏斗胸患者の65.8%(152例)にLevineⅠ~Ⅲ/Ⅶの収縮期雑音もしくは心音異常を認めている(図Ⅰ-31、Ⅰ-32)。

c. 性状

漏斗胸における心音は、一般的には次のようにいわれている。
Ⅰ音、Ⅲ音、Ⅳ音は、ほぼ性状で分裂間隔などにも重症度によって、とくに差を認めない。
Ⅱ音は、重症度とは無関係に幅広く分裂する。これは、肺動脈主幹部の圧迫、屈曲もしくは伸展による右心系の拍出時間の延長のためによるⅡpの遅れによるものと考えられている。
この右心系の拍出時間の延長については、心臓カテーテル検査によっても右室-肺動脈間の軽度の圧較差を認めるという報告があり、また、右室圧曲線においても、拡張期の下方傾斜dipと平坦部plateauとが収縮性心膜炎と同様に認められ、胸骨、肋骨と脊椎との間で右室が圧迫されているとの報告などからも示唆される。
しかし、最近では、軽症例、中等例では、従来からいわれているようにⅡa-Ⅱpは幅広く分裂するが、重症例においてはその分裂はより生理的なものに近い分裂を示すとの報告もみられる。これは、軽症例、中等症例においては、従来よりいわれているように右室流出部および肺動脈主幹部の機械的圧迫による右室拍出時間の延長によるⅡpの遅れと考えられ、Q-Ⅱp時間の有意の延長が認められるが、重症例では心臓全体の圧迫による拡張障害と考えられるため、Ⅱ音の分裂はより生理的に近い分裂様式になると考えられている。
収縮期雑音は、一般にはⅡ音の分裂の原因ともなっている肺動脈主幹部の圧迫ないしは伸展によるものと考えられているが、僧帽弁性の雑音もしくは三尖弁性の雑音との報告もみられている。

d. 実験的研究

Arther Vogelsausは、1956年に次のような興味ある実験を行っている。
収縮期雑音が僧帽弁領域と三尖弁領域の間において聴取され、手術により胸骨、肋骨の陥凹を改善することによって軽減あるいは消失することにより、この雑音は前胸壁の陥凹によって僧帽弁弁輪部の圧迫によるものと考え、剖検時に約10cmの大動脈をつけたまま心臓を取り出し、左室を左房と分離した左室・大動脈標本を作成し、標本の大動脈側により第2指を挿入し大動脈弁を破壊し、その後、大動脈側よりゆっくりと水を満たしてゆくと、僧帽弁はゆっくりと閉鎖してゆきその後snap音をたてて閉鎖し、僧帽弁において逆流はみられない。そのとき、心臓を前後から漏斗胸患者における胸骨と脊椎の関係のように圧迫すると、僧帽弁弁輪は変形し、水が流出してくるのがみられる。このとき発生する収縮期雑音は、リウマチ性の僧帽弁逆流時の雑音と異なりソフトでスムースな雑音であり、器質的な変化はなく、これが漏斗胸患者における収縮期雑音の原因であると考えられると報告している。

e. 呼吸の影響、時相の影響

負荷心電図法においては、呼気時には著明な収縮期雑音を聴取するにもかかわらず、呼気時においては、ほとんどその雑音を聴取できないこともあり、このような呼吸による変化は胸郭変形を有する症例ではしばしば認められる所見であるといわれている。この原因はおそらく呼気時の肺動脈主幹部の屈曲あるいは牽引によるものであると考えられている。
また、一般的には拡張期雑音は伴わないといわれているが、三尖弁領域に拡張期雑音を聴取することもあり、これは、頸動脈波において深いy谷を伴うように胸壁による右室腔の圧迫による拡張早期の三尖弁口の流量の増大に伴う心房-心室流入雑音とも考えられている。 

7. 心電図

胸郭異常の中には漏斗胸、鳩胸、扁平胸、側彎症、straight back syndrome、Marfan症候群などが含まれているが、日常臨床でもっとも多いのは漏斗胸である。
胸郭変形に伴って心臓の位置が変化し、心電図上特異のパターンを呈してくる。

a. 漏斗胸

本疾患の外科治療が行われるようになり、手術前後の心電図変化が明らかになってきた。漏斗胸は図Ⅰ-33のように前胸壁の陥凹した疾患であるが、やせ型長身の体型でもある。扁平胸を合併し、腹壁が膨満し、肋骨弓が突出している。また、第4、第5肋軟骨が左右とも陥凹しており、これをHarrison溝と呼んでいる。
本疾患は遺伝性が濃厚で男女比は4:1で男に多い。著者らが取り扱った症例のうち24%は5歳以下、33%が6~10歳、17%が11~15歳であった。すなわち症例の74%は15歳以下であり、年齢が進むにつれ、手術症例頻度は減少している。
漏斗胸のうち80%は中心型と称し、前胸壁中央部が図Ⅰ-33のように陥凹している。15%の症例では、この陥凹部が右側に偏位し、これを右側優位型と呼んでいる。一方、5%は陥凹部が前胸壁の左側にあり、これを左側優位型と呼んでいる。
図Ⅰ-33
漏斗胸患者の心電図上の特徴は胸部誘導Ⅴ1にもっともよく表されている(図Ⅰ-34)。Ⅴ1の点は本疾患の最陥凹点にもっとも近いからである。前胸壁陥凹のため心臓の位置は左側に偏位している。胸部X線写真では心陰影の右側一弓、右側二弓はいずれも椎体に重なってみえない。
図Ⅰ-34にみるように本疾患の心電図上の特徴はⅤ1のP波が著明に陰転していること、不完全右脚ブロック型がみられることの2点である。手術の対象となった中心型漏斗胸30例の心電図を検討してみると、前例にⅤ1P波の陰転または二相性を認めた。この所見は左房負荷(Psinstrocardiale)に類似しているが、上記の30例はいずれも心疾患がない症例であった。V1のP波陰転の程度をP terminal forceを使って定量すると平均-0.104mm・secであった。
P terminal forceはP波の終わりの部分を面積で、その時間幅と深さの積で表わされる。時間幅は秒(sec)、深さはミリメートル(mm)なので、P terminal forceの単位はmm・secとなる(図Ⅰ-35)。
図Ⅰ-34~35
本研究での心電図記録は1mV=20mmとなっているので、P terminal forceを計算するときは、実際のP波の深さを、まず2で除し1mV=10mmにしてから行なった。P波の形状は呼吸とともにわずかながら変化するので、連続5心拍の平均をとって、P波の測定を行なった。
図Ⅰ-36~37
図Ⅰ-38
手術の対象となった僧帽弁狭窄症のP terminal forceは-0.090mm・sec、心房中隔欠損症では-0.030mm・sec、大動脈弁閉鎖不全症では-0.042mm・sec、肺動脈弁狭窄症では-0.000mm・secであった。すなわち、安静時心電図を比較するかぎり、V1のP波がもっとも陰転しているのは漏斗胸であることがわかった(表Ⅰ-6)。V1のP波陰転は左房負荷の所見といわれている22)が、左房負荷のない漏斗胸で、もっともP波が陰転しているのは興味深い。患者にMaster二段階試験などの運動負荷をかけると、僧帽弁狭窄症患者のV1のP波は著明に陰転化する(図Ⅰ-36、Ⅰ-37)。P terminal forceでみると、-0.090mm・secが、運動負荷後は-0.177mm・secとなった。一方、漏斗胸患者のV1のP terminal forceは運動負荷後も有意な変化を示さない。
漏斗胸患者のV1のP波陰転の原因は心臓の位置が左方に偏位しているためで、V1からでも、aVRのような誘導になるからである(図Ⅰ-38)。図Ⅰ-38のシェーマでみるように、V1からみると心房の刺激が遠去かるように伝導するため、P波が陰転する。
15歳以下の本疾患に対しては胸骨挙上術(SEC)が行なわれる。これは、陥凹している肋軟骨を切除し、胸骨を挙上する方法である。手術後、心臓の位置が正常化すると、V1のPの陰転も正常化し、上向きとなる。成人例では、漏斗胸手術後もP波が正常化しない例が多い23)。
もう1つの漏斗胸患者心電図の特徴はV1にみるように、不完全右脚ブロックがあることである。V1のパターンはrsR’、rSr’、rSR’、rR’型などいろいろであるが、連続30例の中心型漏斗胸の心電図を検討すると、30例中25例にこのようなパターンを認めた。V1が正常なrS型であった症例は30例中5例のみであった。しかもこの5例はいずれも軽度な漏斗胸であった。
漏斗胸では心臓の左方移動があるので左室肥大のパターンが考えられるのが、V1のSと、V5のRを加えて、35mm以上になった症例は30例中2例のみであった(表Ⅰ-7)。平均前額面電気軸も、平均値でみるかぎり正常であった(表Ⅰ-8)。
右優位型漏斗胸の心電図は上記の中心型漏斗胸の場合と同様であるが、左優位型漏斗胸では、心臓の左方偏位が生じないので、V1のP波の陰転はみられない。

b. 鳩胸

肋軟骨が前方に過成長すると前胸壁が突出する。心臓と前胸壁の間に広いスペースができる。本疾患ではV1、V2、V3誘導で低電位を認めるのみで、心電図上の特異点はない。
鳩胸においては、心電図上、V1のP波陰転や不完全右脚ブロックはみられない。右側胸部誘導の低電位が鳩胸患者の特徴といわれているが、まれに心臓の位置が前方に偏位していることがあり、このような症例でのV1-V4の電位は正常または高電位となる。

c. Marfan症候群

漏斗胸に合併してみられる。長身、クモ状指、眼疾患、心血管異常などを合併するが、不全型のMarfan症候群も多い。このとき心臓の時計軸方向回転が生じ、心電図またはベクトル心電図上右室肥大を思わせる(図Ⅰ-39)。
しかし、実際には右室圧は正常なので、Marfan患者の心電図所見はただ軸方向回転によると考えられる。心臓が左側に偏位するとき、時計軸方向回転しながら偏位すると、図Ⅰ-39のように右室肥大パターンとなる。

d. 扁平胸

漏斗胸がなく、単に扁平胸の患者も多数みられる。正常人との差は、胸郭の左右径に比し前後径が少ないことである。脊柱は直線的で、いわゆるstraight backのことが多い。
このような患者では、漏斗胸がなくても心陰影が左方に偏位し、時計方向回転している。そのため、平均前額面電気軸はマイナスとなり、不完全右脚ブロックを認め、左側胸部誘導ではRS型となる。
そのため、心電図上は、心房中隔欠損症や心内膜床欠損症と類似するので注意を要する。

e. 漏斗胸患者の漏斗部を生食ガーゼで充塡したときのV1心電図の変化

漏斗胸患者の心電図V1の位置は著明に陥凹している。この部がもし陥凹していなかったら、V1心電図はどのように変化するか検討した。
漏斗胸患者をベッド上に仰臥位とし、前胸壁陥凹部に生食ガーゼを充塡し、陥凹部がないものとみなし、扁平になったという条件のもとで、心電図V1の記録を行なった。
陥凹部が生食ガーゼで満たされているので、V1の位置は生食ガーゼがない場合に比し、患者の前方に移動したことになる。V1の位置の生食ガーゼ内に心電図V1の電極を埋没して心電図を記録した。
対象およびその結果を表Ⅰ-9に示した。
図Ⅰ-39
図Ⅰ-40~41
前胸部陥凹部を生食ガーゼで充塡してV1を記録すると、V1のR波高は一定または多少減高する。しかし、V1のP terminal forceは正常化する。漏斗胸患者のV1のP波は二相性または陰転しているのが常であるが、この部がなくなると、V1のP波の二相性または陰転が消失する(図Ⅰ-40、Ⅰ-41)。
生食ガーゼと患者皮膚との接触抵抗および生食ガーゼ内の電気伝導度などの問題はあるが、生食ガーゼ充塡により、前胸壁陥凹が消失したと仮定すると、P波の変化が消失する。
このことより、漏斗胸患者のV1のP波が強く陰転している要因の1つは、V1の位置が正常人に比し患者の胸壁の中にくい込んでいるためと考えられる。
漏斗胸患者のV1のP波の変形は、心臓の位置が左方に偏位しているためといわれているが、その要因のみでなく、V1の位置が患者の胸の奥のほうにあることがもう1つの要因と思われる。
漏斗胸患者を手術すると、心臓位置の変化がまだ生じていなくとも、V1のP波がほぼ正常化する現象は、この生食ガーゼ埋没法により十分説明ができるものと思う。

図Ⅰ-42~43

f. 胸部誘導記録用電極の改良

漏斗胸患者は前胸壁が陥凹しているため、心電図V1とV2が交差し(図Ⅰ-42)、心電図記録が困難なことがある。また皮下脂肪のない男性の場合、吸盤用電極の装着が困難なことがあった。
そのため、われわれは胸部誘導記録用電極を吸盤型から圧着型に変更して心電図を記録している。圧着型の場合は皮下出血なども生じないので、一般の患者にも適応があると考えられている(図Ⅰ-43)。

8. 心エコー図

漏斗胸において超音波心電図(以下、心エコー図)をとることの意義はいくつか考えられる24~36)。
まず、胸骨陥凹による心臓への圧迫の精査の手段として、心電図以上の心臓の形態的変化を、実時間的(リアルタイム)にとらえられる。また心エコー図は、簡便、かつ被検者に非観血的に行なえる。そのため、漏斗胸の軽度な例においても、他の心疾患の合併の発見や予知に有用である。
心エコー図はその性質上、体の形状、形態、臓器までの深さにより記録の良否が著しく左右される。したがって、ここでは検査法と、それによって得られる漏斗胸の心エコー図所見の特徴の2点について述べるが、いずれにしてもこの超音波の特質を十分に知ることが大切である。

a. 記録法とその所見

1)被験者の体位
一般の心エコー図の記録は、通常、被検者を仰臥位にして行なうが、漏斗胸においても同様である。しかし、近年、記録困難な症例に対して心臓の位置をより胸壁へ近づけるため、左側臥位約30°~45°をとることが多い。
漏斗胸の場合は胸骨肋骨の陥凹により胸壁が近づいているため、側臥位はむしろ心臓を探触子より遠去ける傾向となり、心尖部など四腔断層図(four chamber view)をねらうときなどを除いて、むしろオーソドックスな仰臥位のほうが良好な像を得ることができる。
胸壁より心臓までの距離が深い肥満体や、肋間が狭く探触子を当てるcardiac windowが小さい高齢者では、一般に心エコー図の記録が困難であることが多い。漏斗胸の場合は前述のようにむしろ若干ながら心臓と胸壁の位置が近くなることが予想され、記録良好とみる向きもあるが、肋骨の過成長とそれによる肋骨自身のため、むしろ肋間は正常例より狭くcardiac windowの大きさが限られていることが多い。また、セクター・スキャンの場合、探触子に近づきすぎると、その記録は多くの場合体表近くの情報が欠け、ことに右心系の場合の情報に乏しくなる。さらに肋骨のアコースティック・シャドウやviewの制限を受ける。
2)探触子の位置
正常例と同様、第4肋間胸骨左縁を中心として撮るのが、胸骨の陥凹が著しい場合、一肋間下げたところが記録最適肋間であることが多い。またこの場合探触子は、陥凹部の斜面に位置する。しかしこの部分は漏斗胸の場合は、ほとんどの例で胸骨より肋軟骨が下方へ斜走する角度がきわめて急なため、隣接する肋骨間が非常に狭い。そのため正常例では容易に得られる長軸断層図(parasternal long axis view)、四腔断層図(parasternal four chamber view)などが鮮明に得られない。
漏斗胸では右室がやや大きいため、三尖弁がみえる長軸断層図か胸骨左縁四腔断層図かのいずれか一方のみで満足せざるをえないことも少なくない。
その他の部位からの記録は、平常例と同様に得られるが、変形が著しい症例では、剣状突起下から記録するとしばしば良好な図を得られないことが多い。これは漏斗胸において胸骨の陥凹のみでなく肋骨弓が逆に前方に突出している例が多いためである。このような症例では剣状突起下からのアプローチでは、胸骨肋骨にさえぎられ、目的の良好な断層を得ることが困難である。
3)漏斗胸の心エコー図
われわれの教室で良好な心エコー図を記録した漏斗胸82例(3~61歳)について心形態の定量的評価を行ない、その結果得られた漏斗胸の心エコー図上の特徴をあげると次のようである。
(1)長軸像においては、僧帽弁論が心尖方向に傾斜し、心室中隔との角度が狭い。つまり弁口が心尖方向より心室中隔方向に向いてくることが多い。
(2)大動脈径に比して左房径が小さく、左房の扁平化がみられる。
(3)短軸像においては、右室が扁平化し、心尖部よりみて時計軸回転し胸壁前方で広く左室をおおっている。
(4)左室短軸像において、心室中隔が左室全周に対して占める割合が増加している。すなわち、正常例より心室中隔の幅が広い。しかし、左室形態には歪みがほとんどみられない。
以上の点について各断層図について取り上げてみる。
図Ⅰ-44
a)左室長軸断層図(parasternal long axis view)(図Ⅰ-44)
このviewにおいては、大動脈径が拡大し、扁平化した左房をみることが多い。大動脈径(Ao)と左房径(LA)の比Ao/LAを求めてみると、正常例(N群)が97±18%であるのに対し、漏斗胸(FC群)が139±47%であり、大動脈径が左房径の約1.4倍あった。絶対値でみるとAoの増加とLAの減少が同時にみられる(図Ⅰ-45)。
これと同時に、僧帽弁論の傾斜を図Ⅰ-46で示すようにして調べると僧帽弁論と心室中隔のなす角度(VS-MR角)は、正常例に比し狭くなっている。拡張終期(ED)、収縮終期(ES)の2点についてVS-MR角を検討した(図Ⅰ-47)。結果は、N群でED:87°±9°、ES:86°±10°であった。これに対し、FC群では、ED:64°±9°、ES:69°±10°と有意に小さかった。つまり心室中隔と僧帽弁論のなす角は、漏斗胸では正常より狭く、しかも収縮期、拡張期の角度の差は正常群より有意に大きかった。すなわち心室の収縮運動に伴い正常より大きく動くことが示された。このような形態的特徴は漏斗胸以外にも、Marfan症候群患者においてみられ、annuloaortic ectasia(AAE)となるものもある。しかしいままで漏斗胸においてAAEの所見は心エコー図上みられない。また、逆にMarfan症候群の間にはなんらかの関係が予想され、今後の研究課題の1つである。
b)左室短軸断層図(short axis view)
大動脈弁レベル(AV level)(図Ⅰ-48)でみると、長軸同様、扁平化した左房をみることが多い。またこの断面は後述するカラー・フロー・マッピング時に、右心系の流入、流出パターンをみるのに大切である。通常の肋間では右室のパターンをみるには肋間が少し高く、パターンがよくみえないことがある。これは平常例に比して右室が胸骨の圧迫により扁平化することが多いためと考えられ、右室断層図が十分に描写されるようさらに下の肋間を選ぶ必要がある。
次に僧帽弁レベル(MV level)(図Ⅰ-49)であるが、このレベルでは、僧帽弁逸脱症の部位診断に大切である。また、心室中隔(IVS)の長さが左室全周に占める割合や、右室の形態、位置を検討する必要がある。この位置では左室全周に中隔の占める割合が高く、広い中隔をもつ。
図Ⅰ-45~47
図Ⅰ-48~50
腱索レベル(CT lebel)(図Ⅰ-50)では、僧帽弁レベルと同様、広い中隔と左室前面を広くおおう扁平な右室が特徴的である。腱索の断裂などに注意することはいうまでもない。
乳頭筋レベル(PM lebel)(図Ⅰ-51)においても僧帽弁レベルと同様である。さらにここでは前後2つの乳頭筋の位置に注目し、中隔拡大の原因と左室肥大・拡大との関係を検討する。
図Ⅰ-51~53
最後に心尖部レベル(apex lebel)(図Ⅰ-52)でも右室の拡大をみることがある。
僧帽弁レベル、腱索レベル、乳頭筋レベルに関して左室短軸面で心室中隔の占める割合を左室短軸の心外面周長に対して求め「%VS」とし(図Ⅰ-53左)、それらを拡張終期において僧帽弁レベル(MV level)、腱索レベル(CT level)、乳頭筋レベル(PM level)で測定した。また、左室の拡大、歪みをみるため、前後乳頭筋の前方、後方の心内膜面上の周長比を定め、「A/P」とした(図Ⅰ-53右)。
図Ⅰ-54
結果は図Ⅰ-54のとおりである。N群では%VSがMV、CT、PM各レベルで32±4%、31±5%、27±9%なのに対し、FC群では、41±4%、40±4%、31±5%と有意に拡大を認めた。A/PではN群179±41%、FC群189±60%で有意差を認めなかったことから、左室拡大、肥大はないと思われ中隔の拡大に関係はみられず、また断層面において歪みも認められなかった。
長軸での所見同様、この中隔の所見の他に心房中隔欠損症にも、ときには正常例にもみられることがあり、漏斗胸のみにかぎってみられる特徴ではない。
以上のような心形態的特徴は、現在までのわれわれの検討では、MV levelにおける%VS以外には年齢の影響を認めなかった。しかもこのような変化がいつごろから生じ、何歳ぐらいで完成するかについては、まったく知られていない。
左室の歪みについては、前胸壁変形の高度な例で術前に歪みがみられ術後改善したとの報告もある。われわれの検討では、強度の漏斗胸の中で絶対的な右心室腔の圧迫を受け、右室変形が限界に達し、左室にも歪みがみられた例が2例あった。これはすでに報告のある拡張障害による影響が強いとみられ、漏斗胸全体としては、左室の変形は右室のそれに比してはるかに少ないと思われる。
手術の影響については、まだ長期の心エコー図による検討を行なっている途中で、結論について統一をいまだみない、現在までのところ、15歳以上の胸骨飜転術を施行させた例で術前・後で心臓カテーテル検査を行なった症例26例では、TS-MR角、%VS、Ao/LA、A/Pなどについては上記の形態的な特徴に有意な変化を認めていない。また心臓カテーテルによるcardiac indexでも、術前4.46l/min・㎡、術後4.70l/ min・㎡と、ともに正常範囲で、前胸壁修復術による有意な変化はみられなかった。
以上のように漏斗胸におけるこの心形態的特徴は、年齢の影響をほとんど受けず幼少より成人までみられるということより、発生、成長の初期に生じた可能性を示唆するものと推察される。また術前、術後の変化などを考えると、前後径の減少した限られた胸腔内空間において、心拍出量を維持するために、右室および左房が扁平化して左室の形態、機能を保持しようとするものという考えもある。
c)Mモード
Mモードに関しても、心断層エコー図でみられたのと同様の所見がみられる。福田らは変形の著しい症例の心室中隔の拡張期後方運動を報告しているが、これは心臓の拡張期の心臓の心長軸中心の時計軸回転運動によるみかけ上の運動と結論している。一般には漏斗胸の壁運動は、ほぼ正常例と同様の動きを示すようである。僧帽弁のMモードにおいては、DE slopeの減傾、EFoの長いDDRの低下、amplitudeの高いF点による谷の浅いパターンが多くみられる。しかしいずれの場合も、類似の所見が他疾患においても考えられることから、心断層図との検討が必要とされる。
d)心疾患合併例
漏斗胸においては僧帽弁逸脱症は比較的多くみられるという報告は、いくつかの観血的検査法により報告がある。心エコー図によれば弁の逸脱は長軸もしくは四腔断面図において、僧帽弁論より弁の一部が左房内へ落ち込むことで判定される。よって逸脱症の診断には心エコー図がもっとも正確な判断をくだしうる。漏斗胸の場合は、僧帽弁論が正常例より傾斜が著しく、動きも大きいこと、良好な長軸および四腔断層図がともにそろう例が少ないことなどにより、判定困難例も多い。明らかに僧帽弁の逸脱を示したものは今回約17%であるが、実際にはこれ以上の症例があると予想される。
近年、いわゆるカラー・ドップラー(color flow mapping)の実用化により逆流性疾患およびシャント疾患、心腔内での血流フローの状態についての検討が、かつてない早さで進んでいる。しかしながら、漏斗胸における研究はまだ始まったばかりである。
心臓カテーテル検査も同時に行ないえた12例について、表Ⅰ-10に示すような結果を得ている。ここでは肺動脈弁逆流が多くみられたが、心臓カテーテル検査により確認されたのは4例中3例であった。さらにこの3例中、術後逆流が消失したものは2例あり、漏斗胸による右心系への影響が手術により解除されたことが確認されている。大動脈弁閉鎖不全の例は、漏斗胸の手術と同時に、人工弁置換術を同時に行ないえた、ここでは僧帽弁逸脱症を12例中5例みたが、僧帽弁閉鎖不全を認めたのは1例のみであった。左室への流入パターンは正常例と同様、左室下壁より心尖部に達し、心室中隔に沿って左室流出路に向かうパターンがほとんどと思われる。

b. 心エコー図の今後

漏斗胸に対する当検査法は、非常に有用でありながら、超音波の医学応用の始まった1954年以来、観血的検査の報告は多いが、非観血検査、とくに心エコー図に関する報告は少ない。今後は、color flow mappingの出現とともに、さらに多くの知見が得られることが期待される38)。

9. モアレトポグラフィー

a. モアレについて

モアレ(moire’)というのは、フランス語で“波形をつけた”という意味であり、木目や水形模様のことも表わしている(図Ⅰ-55)。また、モアレ縞という言葉は、2種以上の紋様を重ねるときに生ずる新しい縞模様に対して用いられている。たとえば、2枚のすだれが重なった部分に生ずる複雑に変化する縞模様がモアレ縞である。
モアレ現象について最初に論文が発表されたのは、1874年、英国の物理学者であるLord Rayleighによってであった。初めてモアレ縞が測定に利用されたのは1945年、Tolenaarによってであったが、主に変位測定や歪みの測定などが物理学の方面だけに限られていた。1970年に、高崎やD.M.Meadowsら40)により大きな粗面体の三次元的形状測定にモアレトポグラフィーを適応してから、種々の分野で広く応用されるようになった。この方法を前胸壁変形疾患に応用したのは、1974年、和田ら41)が漏斗胸の手術後の評価法として利用したのが最初の試みと思われる

図Ⅰ-55~56

b. モアレトポグラフィーとその原理39.40.42~44)

モアレ縞による等高線パターン計測をモアレトポグラフィー(moire topography)という。モアレトポグラフィー法には、2通りある。格子照射型法と格子投影型法であり、前者は、高崎やD.M.Meadowsが人体測定などに使用している。われわれが前胸壁の測定に使用しているのも格子照射型法である。
格子照射型において、モアレ縞の等高線は格子条の間隔(ピッチ)、格子面と平行に位置する光源とカメラから格子面までの距離、光源とカメラとの距離の3つの条件設定によって決定される。光源からの光は、格子条の間を通って格子面の下に放射状の光束となる。この光束を視点から格子条間を通してみると、光束と視点の交差が光ってみえることになる。この光束と視点の交わりの軌跡が格子面に対して平行な等高面を幾層もつくることになる(図Ⅰ-56:A1B1C1D1…、A2B2C2D2…、AnBnCnDn…)。この等高面に物体をおいたとき、物体表面と各等高面との交線が等高線として何本も描き出されることとなる。この等高線モアレは次の式で表わされる。図Ⅰ-56において、基準格子のピッチをs、モアレ次数をnとすると、基準格子からn次の等高線のモアレ縞が形成される位置までの距離は、次のようにして求められる。
図Ⅰ-57
Hnの暗い等高面では、

明るい等高面では、

等高線間隔(△hn)は

となる。ゆえに、点光源を用いたモアレ縞の等高線間隔は、正確に等間隔ではなく、格子面から遠ざかるにつれて漸増するが、その誤差はわずかである。

c. モアレ装置

図Ⅰ-57に示した装置45)は、1980年に当教室にて開発した臥位型モアレ装置である。横幅が約70cm、縦が約150cm、高さが約180cm、重量150kgである。格子照射型で証明と写真撮影は格子の上に45度の角度で取り付けた鏡を介して行ない、偽モアレ出現防止に格子の往復運動装置がついている。
撮影は、前胸壁を白く塗り、暗室にて行なった。これは主に入院患者に対して使用し、実験的にも精度が高い。
だが、モアレトポグラフィーを使用して多数の前胸壁変形疾患の術前後、術後長期の変化を評価検討するには、外来にて簡単に使用できるモアレ装置が必要であった。図Ⅰ-58に示した立体型モアレ装置は、整形外科分野46)で側彎症に対しても使用しているタイプのものであるが前胸壁の評価に使用してみた。装置は格子の台とカメラと光源のついている台に分かれており、昼光下にて1症例につき3~5分ほどで撮影可能である。さらにカメラをポラロイドとしたために、すぐ結果が判明する。また、設置場所が少ないスペースですむなどの利点があった。しかし、立体であるため、基準面の設定が困難であること、また、良いモアレ写真を得るには、格子面に対して患者が平行になるように立たなければならないが、幼小児では非常に困難である。さらに台が動くので、撮影者により条件が異なってしまうなどの不都合な点があった。
図Ⅰ-58~59
図Ⅰ-59は、両方の利点を取り入れて製作した臥位型モアレ装置である47)・写真機と光源を壁に固定した。使用方法としては、患者をベッドに仰臥させたのち、53×55cm、4.0kgの格子を患者の胸部にのせて撮影を行なう。フラッシュを光源として使用したので、前胸壁を白く塗布しなくても、昼光下にて明暗の強いモアレ縞が得られた。また、仰臥させるので幼小児でも格子面に対して平行に前胸壁を位置させることが可能であり、カメラ-格子間距離も固定されているため、条件が一定のモアレ写真が得られる。さらに基準面が固定されているので、術後の定性的・定量的変化の計測のほかにも呼吸パターンも含めた呼吸分析に応用することが可能である。
図Ⅰ-60~61
図Ⅰ-60は、小児の立位と臥位のモアレ写真であるが、立体型のものでは格子に対して患者が平行に立っていないため、モアレ縞が流れている。図Ⅰ-61は、漏斗胸の非常に高度な患者であるが、立位では陥凹部の下部が格子面に対して急角度となるため、偽モアレを生じ計測しにくいモアレ写真となっている。これらのように、安定した計測の対象となるモアレ写真を前胸壁変形疾患患者で得るには、臥位型モアレがよいようである。

図Ⅰ-62

d. 前胸壁変形疾患のパターン分類

パターン分類に際してはマイクロコンピューターを使用してモアレ縞の解析を行なった(図Ⅰ-62)48.49)。解析の対象としたモアレ写真部位は、写真上、液窩にて胸部横径を測定し(A)、胸骨上窩より胸部横径と同じ長さを測り(A’)正方形を作成し、この幅とした。ディジタイザーにてモアレ縞をコンピューターに入力してモアレ縞の略図を得た。この略図上で、横径と縦径をそれぞれ4分画し、横径は右(R)、中(M)、左(Lt)の縦線で区切り、縦径は、上(U)、中(M)、下(L)の横線で分けた。これに、モアレ縞のパターン上、最陥凹部(最突出部)と認識できる部位に、1cm間隔の任意の補助線を追加して、横線をC1.2.3.…、縦線をl1.2.3.…とする。次にコンピューターにより、これらの横線と縦線のそれぞれに対する横断面、縦断面を求めて、前胸部変形の比較を行なった。まず最陥凹部(最突出部)に引いた横線C1.2.3…のそれぞれの横断面、縦線l1.2.3.…のそれぞれの縦断面を比較して、真の最陥凹部(最突出部)を求めた。さらに、最陥凹部(最突出部)の縦線(lX)の位置により、中心型、右優位型、左優位型と分類し、これに属しない形態はその他とした(図Ⅰ-63)。中心型は、lXが中心線(M)からMRまたはMLの中心側1/3以内に入るものと定義し、それより右側のものを右優位型、それより左側のものを左優位型とした。
 
図Ⅰ-63

次に変形の範囲によって、広汎型と限局型に分類した。変形の範囲が上横線(U)を超えているものを広汎型、超えない場合を限局型とし、これは最陥凹部(最突出部)の横線(cx)と上横線(U)とを横断面で比較して決定した。以上の方法で、分類したものが表Ⅰ-11である。この分類方法をもとにして入院患者のうち任意の100例を分類したところ、表Ⅰ-12のようになった。漏斗胸は、中心型が56%、そのうち6/7が限局型で1/7が広汎型、右優位型は36%で限局型と広汎型が約半々を示し、左優位型は5%で全例が限局型、その他が3%であった。これを年齢別にみると、5歳以下でほとんど全例が限局性の中心型であり、6~10歳までは中心型が60%で全例が限局型、右優位型が40%で、そのうち3/4が限局型で1/4が広汎型を示し、年齢がふえるにつれて広汎型が多くなる傾向をみせ、36歳以上になると全例が広汎性の右優位型であった。鳩胸は、keeled型92%で、ほとんどが中心型であり、pouter型が8%であった。心疾患を合併している患者は、左優位のkeeled型が多くみられた。
また、外来において156症例に対してモアレ写真の分析によるパターン分類を行なった51)。表Ⅰ-13のように、漏斗胸では中心型が75%を占め、このうち86%が限局型である。つまり限局性中心型は全体の65%でありもっとも多い。右優位型は30%を占め、その2/3が広汎型である。左優位型は3.5%で、4/5が限局型であり、その他の型は1.5%であった。年齢別の比較では、5歳以下で限局性の中心型が8割を占め、6~10歳でも限局性の中心型が8割を占めている。

図Ⅰ-64
外来患者では、0~10歳までの患者の占める割合が65%と、入院患者の48%に比べて多い。その理由として、3~4歳までは陥凹の程度が軽度となることを期待して経過観察を行なうことが多いこと、またこの年代では手術待ちの患者が多いことがあげられる。低年齢の患者では限局性の中心型の漏斗胸が多いので、外来患者における限局性の中心型漏斗胸は65%と大きな割合を占めることとなる。高年齢になるにつれて広汎性となる傾向をみせるのは、入院患者と同様であった。鳩胸は8例で、ほとんどがkeel型の中心型のものであることは入院患者と同様であった。

e. 術前・術後の評価(短期および長期)

図Ⅰ-64は、術前・術後のモアレ写真であるが、前胸部の陥凹が消失し、術後正常な胸郭にもどったことが、モアレ縞にてよく表われている。
このように、各症例ごとには術前術後の変化を知るには、モアレ写真は有用であるが、統計的に術後短期・長期の変化をみるには、これを数値化する必要があった。モアレ縞による前胸壁変形の数値化は、草島らがモアレindexなるものを考案して行なっているが、1症例に対して数値化する個所が多く評価しにくい点があった。
そこで、前胸部の陥凹(突出部)の程度だけに焦点を絞ってモアレ写真より数値化を行ない、定量的に術前・術後の変化を検討した。
図Ⅰ-65~66
原理としては、図Ⅰ-65のようにモアレ写真上もっとも陥凹の強い部分を通る横線を引き、胸骨上窩よりその線上の最陥凹点までのモアレ縞の数をAとし、胸部上窩より最膨隆点までの縞の数をBとして、A/Bを算出した。理論的には前胸部がまったく平坦な場合に、A/Bは1.00となる。この値は、コンピューター分析により描いた断面から算出した値(A’/B’)ともよく一致した。陥凹部の広範囲な場合やほとんど陥凹が認められない場合には、測定の横線を上下の中間(M)に設定した。

図Ⅰ-66は、漏斗胸の7歳女性の前胸部のモアレ写真である。術前には、前胸部陥凹は高度でA/Bは0.43を示した。胸筋挙上術を施行したあと1か月の写真では、A/Bは1.00となり前胸部の陥凹がまったくないことが示されている。術後12か月のA/Bは、0.94であり、少し減少したが陥凹はほとんど認められない。
表Ⅰ-14は、25症例に対してA/Bを算出した結果である。術前のA/Bはかなり広範囲に分布したが、0.5以下のものが多く、全体の68%を占めている。術直後から術後3か月の間の平均のA/Bは0.90±0.13であり、6か月から12か月後では平均0.82±0.18となっている。正常の胸郭のA/Bは0.80~0.90であり、平均は0.85±0.01であるので、術直後は正常の胸部に近づいたとみなせるし、6~12か月後の変化も少なく、ほぼ満足するべき手術結果であることが示されている。
図Ⅰ-67~68
ここで、A/Bの値により4つのグループに分類したものが表Ⅰ-15である。グループⅠはA/Bが1.00~0.80、Ⅱは0.79~0.40、Ⅲは0.39~0.00、Ⅳは0.00以下である。この4グループは、現在当教室で使用されているグレード分類とほぼ相関するようになっている。Ⅱグループはもっとも多く52%を占めている。ⅣグループではA/Bが0.00以下であるので、陥凹部が胸骨上窩よりも背側に入り込むような陥凹程度の激しいものであるが、年齢も高く、平均26歳となっている。ⅠからⅢグループまでは、術後長期の(6~12か月)A/Bは正常範囲内であるが、Ⅳグループのみが術直後も0.73と軽度の陥凹があったものが、0.51まで1年後に引き戻されている。このグループは、変形の程度の激しいこと以外にも、高年齢であるために骨の硬化があり、改善され難い一因となっていると考えられる。これらのことにより、A/Bが0.01以上の症例では、良好な手術結果が期待されること、また、手術時期は骨の硬化が進んでいない学童期までに行なうのが望ましいと思われる。
次に、5年間、モアレ写真にて経過観察を行なった症例を検討してみた。図Ⅰ-67は、5年前に胸骨飜転術を施行する術前後のモアレ写真である。このときのA/Bは0.7でありⅡグループであった。術後A/Bは1.00となっている。図Ⅰ-68は、5年後に再手術を施行したときの術前術後のモアレ写真である。術前のA/Bは0.55でありⅡグループにもどっている。術前のモアレ写真上では、上胸部が第1回目の手術後再陥凹してきたこと、また左第5肋骨部位の鎖骨中線より内側に突出部が出現したことがわかる。この突出部位は、病理標本にて第5肋骨弓の肋軟骨の過剰な増殖であることが判明した。再手術後は、A/Bは再び1.00となっている。この症例では、肋軟骨の成長が予想したよりも大きく、再び陥凹してしまった。手術後に残った肋軟骨の成長を考慮して、若年者ほど、肋軟骨の切除は多めに行なうべきであると考えられる。

10. 精神的影響

胸郭変形患者においては、その外表面における形態的異常が、通常衣服におおわれていることから、顔面あるいは四肢における奇形と異なり、それほど衆目にさらされることなく、軽症の場合には患者(この場合患者と呼ぶことが妥当であるか否かの問題のあるところであるが)は自己の形態学的異常を気にしないか、あるいは胸郭変形自体が一般社会の中で1つの疾患単位としての十分なコンセンサスが得られていないことから、自己の異常をまったく認識しない例が多い。
最近、学校検診における骨格系の問題として脊椎側彎とともに漏斗胸や鳩胸も注目されるようになり、検診によって異常を指摘されて当院外来を受診する患者数は増加している。
現在、外来を受診患者の受診動機は大きく二分される。
第1は、主として上述の学校検診にて胸郭の異常を指摘された両親が主体となって外来を受診するもので、外来での医師への質問は手術が必要かどうかが主点となり、手術に対する反応では、さらに二分される。そのうちの1つは、漏斗胸としては、軽症で手術適応とは判定され難いにもかかわらず、むしろ両親(この場合母親であることが多い)が積極的に医師に対して手術を希望する。もう1つは、これとは逆に手術の適応外であることを期待して来院する親子であり、この場合にはときとして中等度異常の漏斗胸が手術の対象からはずれることにもなる。これらにおいては、患者たちは主として3~8歳の、就学前から小学校低学年の児童が大半であるが、なかには中学校あるいは高校生の場合もある。彼らは学校検診においての胸郭変形検索の網からなんらかの理由で漏れていたと考えられる。
その第2は、患者自身の自発的意志によって外来を受診する場合で、患者たちは、自己の胸郭変形に対して少なからぬ劣等意識をもっており、それらの大半は、小学校高学年から思春期にかけて主として級友あるいは他の友人から指摘されて認識するようになる。とくに団体生活の場としての学校で、体育の授業前の更衣室、夏季の水泳のときなどに胸部変形は衆目にさらされる。外来での目常診療で遭遇する例の多くは、当教室で用いている漏斗胸重症度分類2度以上であり、3度以上では明らかに胸腔内容積の減少と心肺への圧迫所見を認めるが、患者本人とくに思春期以降の例においては、それら理学的所見以上に精神的要素・欲求が強く、これはまた、まだ自己の確立されていないと考えられる幼小児例における患者の家族、ことに母親の心境にはほぼ等しい。


これら日常診療において感じる精神的側面に対して、どのようにアプローチしていくかという命題が必然的に生じており、今回、外表奇形(本項では漏斗胸症例にかぎって)における精神病理の一側面としての性格特性の分析を試み、これによって漏斗胸患者が自己の胸部変形からどのような影響を受けているか、また術前・術後を比較検討することによって、手術による影響がどのように現われているかを検討してみた。

a. 対象および方法

対象の抽出は、術前例(group-A)として当科手術待ち患者リストより小児例(3~8歳)および成人例(20歳以上)をそれぞれ12名ずつ、同じく術後例として、手術後6か月以上経過している小児例と成人例を12例ずつ無作為に選出して、各個に対して、Y-Gテスト用紙(日本心理テスト研究所発行)を郵送する方法をとった。これら、抽出された症例を、A-1=術前小児、A-2=術前成人、B-1=術後小児、B-2=術後成人の4群に分類した。
なお、解答にあたって、小児例では、小学校低学年用Y-Gテストに対して、本人が解答できない場合は母親の解答をもってその代用とした。

Y-Gテストの中の各項目の意味する特性を図Ⅰ-69に示す。これらの項目の各得点を参考に、その全体像としてのプロフィールを図Ⅰ-70のように5型に分類して判定の指標としている52)。この5型の内容は、①平均型(A類)、②右寄り型(B類)、③左寄り型(C類)、④右下がり型D類)、⑤左下がり型(E類)で、これらによって表わされる性格・人格の概要を表Ⅰ-16、Ⅰ-17に示す。これをもとに漏斗胸術前術後の4群について、その比較検討を行なった。

b. 結果

解答のあった例を各群別にみると、A-1群:4/12例、A-2群:6/12例、B-1群:7/12例、B-2群:8/12例で、A・B両群を比較すると、術後であるB群に高い解答率を認めた。(表Ⅰ-18)。

各グループ別にその性格特性をみると、術前小児例(A-1群)(表Ⅰ-19)では、A:2例、C:1例、AC:1例で情緒安定性は平均ないし安定、社会適応性では平均ないし適応を示し、向性では平均あるいは内向を示した。術前成人例(A-2群)(表Ⅰ-19)では、A:3例、D:2例、E:1例で、6例中5例では情緒安定性が平均ないし安定、社会適応性は平均または適応を示し、向性でも平均あるいは外向という結果であったが、33歳の男性例では、不安定、不適応、内向を示した。術後例における結果では、小児例(B-1群)(表Ⅰ-20)でC:3例、D:4例であり、これらから得られる特性では、情緒安定性は安定、社会適応性では適応または平均と似通っていたが、向性において、まったく正反対の特性が混在した。術後成人例(B-2群)(表Ⅰ-20)では、AからEまでの各型がそれぞれ1~2例認められ、これといった傾向をもたないが、術前成人例にもみられたE型が1例含まれている。この例は24歳の女性であった。

c. 考案

外表面における奇形の存在は、それらの奇形を持ち合わせない人、すなわちいわゆる普通の人たちが、毎日鏡をのぞきこんでは、鼻の高さや目の形、唇の大きさから顔の輪郭まで、およそ目に入るもの、つまり人目にさらされる物に対して限りなく理想を追い求めることからも想像されるように、その個人にとっては、いかなる方法によっても逃れられない劣等感の源であろう。
われわれも、日常診療において数多くの漏斗胸症例を経験するにつれて、ある個人にとっては耐え難い精神的苦痛に成長していくようである。形成外科の領域では、Tagliacozzi(16世紀のイタリアの外科医、腕からの皮弁を用いての造鼻術で有名)は、すでに形成外科の目的が、患者の精神的側面に向けられていることを明らかにしていた53)。
形態異常が患者にどのような影響を与えるかを心身医学的にとらえると、①形態異常が直接患者自身に与える影響、②家族に与える影響、③社会が患者をどう扱うか、の3つの面が指摘されている。われわれが日頃経験する例では、このうち①と③は成人例に、②と③、その中でもとくに②が強くみられるのが小児例である。
成人例でとくに目立つのは、性格的に引っ込み思案であるとか、いつもうつ向きかげんであるといった訴えであり、患者たちは手術を受けることでそれらから開放され、目の前が明るく開けると考えている場合が多いことである。そのような例では、患者たちは早く手術を受けることを望んでおり、術後は術前とはうってかわった明るい表情を表わすとともに、われわれに対してもある程度開放的になって話をしてくれる。
小児例の場合、その家族の中でもっとも影響を受けるのは母親のようである。外来でときに遭遇するのは、子供を連れた母親に父方の祖父母が付き添ってくる場合で、心配顔な母親の横で「家の家系には胸の凹んだものはいない―――」と、さも自分たちのせいではなく、嫁に原因があるのではないだろうかといわんばかりに医師に対して訴え、その横で母親が心配そうに医師の反応に耳を聴けていることすら経験される。
今回の調査では、少数例であるためにその正確な判断は困難であるが、成人例で術前術後に各1例類型Eに属する症例がみられたのに対して、小児例では全例が類型A、C、Dのいずれかに含まれていたことから考えると、精神的影響が表面化する時期が、今回対象とした2つの年齢群の間に存在する可能性が高く、このことは思春期以降に気になりだす形態異常のほとんどが軽症例か衣服にかくれる部位にあるものであったとする報告と一致する54)。また、この報告の中では、中年期以降においても形態異常の心理的影響は存在するとしている。また、類型Eを示したものは男女各1例であったが、性別と心理的影響については、問題となるのはほとんどが男性であるとされている54)。しかしながら、これらの性格特性の偏移は、必ずしも外表面奇形の重症度とは相関せず、個人の因子が深く関与している55)。

d.まとめ

成人および小児の漏斗胸症例について、術前術後のそれぞれ12例ずつ計48例にY-Gテストを送付し、郵送による解答をもって集計し、検討した。解答率では、術後例が術前例に比して高かった。少数例であるため詳細な検索は困難であったが、成人例の中に性格特性として不安定な類型に属する2例がみられ、漏斗胸による心理的・精神的影響が思春期以降に具体化する可能性が推察された。

11. 血行動態と冠状動脈造影

高度な前胸部陥凹を伴った漏斗胸患者は、労作時呼吸困難、前胸部痛、動悸などの症状を訴えることがある。これらの症状発現には、前胸壁の陥凹によってひき起こされる心肺機能への影響が少なからず関与しているものと考えられる。漏斗胸患者における胸部単純X線正面像(図Ⅰ-71)では、多くの場合、心陰影の右第1、2弓を欠き、左第4弓の突出を認める。これは心臓の位置が左に偏位するため心右縁が胸椎と重なるためである。
また側面像(図Ⅰ-71)では、陥凹した胸骨が心陰影に重なって認められる。
さらに胸部CT像(図Ⅰ-72)では、前胸壁陥凹による心肺の圧迫が、心大血管系にどの程度の影響を及ぼしているかを明らかにするため、心臓カテーテル検査、心血管造影を施行し検討した56,57)。
対象とした症例(表Ⅰ-21)は、18~53歳までの30例で、平均年齢は28歳、男性22例、女性8例である。
陥凹の程度は、臨床分類の4段階評価を使用した結果、gradeⅡ5例、gradeⅢ23例、gradeⅣ2例であった。これら全例に対し両心カテーテル検査、左室造影、冠状動脈造影、大動脈造影などを施行した。

a. 圧側定(図Ⅰ-73、Ⅰ-74)

心腔内各部の圧測定で次の結果を得た。
平均右房圧(RA):5.5±2.17mmHg
右室拡張末期圧(RVEDP):6.8±2.50mmHg
右室収縮期圧(RVmax):29.3±4.93mmHg
肺動脈収縮期圧(PAmax):2.51±5.19mmHg
肺動脈拡張期圧(PAmin):9.8±2.71mmHg
肺動脈平均圧(PAmean):1.59±3.59mmHg
肺動脈楔入圧(PAwedge):9.4±3.22mmHg
左室拡張末期圧(LVEDP):12.0±4.03mmHg
これらの結果から、本疾患の圧測定値は正常範囲上限を大きく逸脱することはないが、軽度の上昇傾向を示した。


b. 心係数

1回拍出係数、左室駆出率(図Ⅰ-75)を測定し次の結果を得た。
心係数(CI):4.1±0.74l/min/㎡
1回拍出係数(SVI):56.5±9.29ml/beat/㎡
左室駆出率(EF):6.44±7.97%
熱希釈法により測定した心係数、1回拍出係数は、正常に比し少し高い傾向を示したが、左室駆出率(左室造影より計測)はほぼ正常であった。

c. 左室造影(図Ⅰ-76、表Ⅰ-22)

第1斜位における左室造影像で、漏斗胸に特徴的な所見は、僧帽弁逸脱を伴うことである。左室収縮期における僧帽弁の後方運動(左房側への突出)を陽性所見として判定した結果、30例中17例に僧帽弁逸脱を認め、判定不能例を除外すれば65%の陽性率を示した。逸脱の程度は、軽度なものから著明なものまでが含まれるが、閉鎖不全を伴った症例はなかった。

d. 冠状動脈造影(図Ⅰ-77、Ⅰ-78)

第2斜位または側面像における右冠状動脈の走行に前胸部陥凹によると考えられる特徴的な所見を得ることがあった。漏斗胸の陥凹胸壁は、その最陥凹点を右房前面から房室付近に一致して認める症例が多く、この部位は右冠状動脈の走行部位に一致する。全例に認めるものではないが、右冠状動脈(図Ⅰ-77)が陥凹した前胸壁を避けるように左側に凸となった像を得る例があった。この屈曲は漏斗胸手術後に確認しえた右冠状動脈造影(図Ⅰ-78)で著明な改善を示していた。前胸壁の陥凹に伴って心臓は多くの場合左方へ圧排されるが、その程度は一様ではなく、陥凹の起こり方や重症度によって異なってくるものと考えられる。
以上の心臓カテーテル検査、心血管造影より得られたデータは安静時におけるものである。漏斗胸患者には、前胸部陥凹に伴って生じる心肺の直接的な圧迫や胸郭容積の減少があり、これらの及ぼす心肺機能への悪影響が安静時には、心内圧の軽度上昇傾向として認められた。高度漏斗胸に伴う臨床症状は、主に労作時に発現するもので、運動負荷をかけて同様な検査を施行すれば明確な違いが生じるものと推定される。

12. 漏斗胸患者の側彎症

脊柱側彎症は、整形外科領域において古くより研究されており、とくに昭和54年度より学校保健法でも取り上げられ学童検診が行なわれ、注目の疾患となっている。
漏斗胸と脊柱側彎症との関連についてはこれまでの成書や種々の報告の中にも記述はなく、わずかに和田らの漏斗胸患者の集計(表Ⅰ-23)の中に脊柱側彎の合併頻度をみるにすぎない。
そこで、和田らの集計を参考とし今回新たに調査した集計をもとに、漏斗胸患者における脊柱側彎症について検討を加えた。

a. 対象

昭和59年1月より昭和60年7月の間に当科入院となった漏斗胸患者352例で、X線写真を用いて脊柱側彎症の有無を調査した。この中には9例のMarfan症候群が含まれていた。表Ⅰ-24は対象患者を示したものであるが、年齢は3~53歳に及び、男女比は3.4:1であった。また個々の患者の漏斗胸の程度は、当科で使用している臨床分類法(表Ⅰ-25)により分類した。漏斗胸の形態は、対称型、右優位型、左優位型と分類した。

b. 結果

脊柱側彎は、X線計測にてCobb角を測定し、整形外科的に要観察とされる10度以上の場合を有意の側彎症とし、リストアップした(表Ⅰ-26)。


1) 側彎発生率
全体として352例中59例(16.8%)に脊柱側彎症が認められた。しかし表Ⅰ-27に示すように年齢よりその発生頻度が大きく異なっている。
学童検診における脊柱側彎発生率が1~2%であることを考慮すると、漏斗胸患者は、学童からすでに高頻度に脊柱側彎症が認められている。そして第2次成長期において、急激にその発生率は高くなり、成人例ではほぼ半数に認められるようになる。男女別では女子にやや発生率が高い傾向がみられ、また漏斗胸の程度の重症例ほど、発生率は高い傾向が認められた(表Ⅰ-28)。
和田らは、漏斗胸の形態と側彎発生率について注目しており、対称型例に比し、非対称型例において有意に側彎発生率が高いと指摘している。今回の調査でも同様の結果を示した(表Ⅰ-29)。
2) 脊柱側彎の彎曲度について
約8割の症例は20度未満の軽度側彎であった。20度以上のものを13例認めたが、うちMarfan症候群が5例含まれていた。漏斗胸の程度との関連では、やはり漏斗胸重症例ほど側彎の程度も 大きくなる傾向を認めた(図Ⅰ-79)。

3) カーブパターン
米国側彎症研究会(American Scoliosis Research Society)分類に従うと、ごく一部を除き、Th3~5を頂椎とするlt.thoracic curve (LTC), Th7~9を頂椎とするrt.thoracic curve (RTC) および lt.-rt.double thoracic curve (DTC) の3つのパターンに大別された(表Ⅰ-30、図Ⅰ-80、Ⅰ-81)。しかもその範囲は、一部頸椎または腰椎に及ぶが、ほとんど胸椎に限局したものであった。
また上部胸椎におけるLTCおよびDTCは、特発性側彎症では非常に少ないとされるパターンであり、これは漏斗胸と脊柱側彎症の因果関係を推測するうえでの興味ある所見である。

つまり上部胸椎におけるカーブは、おおむねT1~T7の範囲であり、これは骨性胸郭の前方で胸骨に付着する肋骨軟骨がT1~T7であることと関連を推定させる。一方、RTCパターンを示すものが約半数を占めたが、この成因についてははたして漏斗胸における骨性胸郭全体としての変形ととらえてよいものかどうか疑問が残る点である。
4) Marfan症候群について
Marfan症候群では漏斗胸および側彎症を部分症候として示すことがある。Marfan症候群患者の側彎症については多くの研究がみられ、その発生頻度は50~60%程度といわれている。
カーブパターンは、rt.-lt.double major curve あるいはrt.single curveが多いといわれている。今回の調査で9例のMarfan症候群中6例(66.7%)に脊柱側彎症の発生を認め、諸家の報告とほぼ一致をみたが、その6例中2例にMarfan scoliosis としてはまれとされるLTCパターンを呈したのではないかと強く推定された。

c. まとめ

漏斗胸患者における脊柱側彎症の発生率は第2次成長期以降急速に高くなり成人例では約半数に認められる。漏斗胸変形の程度が高度なほど、また対称性漏斗胸より非対称性例のほうが発生率が高い。
脊柱側彎の程度は、Cobb角20度未満の軽症例が約80%を占める。その形態は、LTC、DTC、RTCパターンの3つに大別され、そのほとんどは胸椎部に限局したものである。LTC、DTCパターンは、漏斗胸患者に特有のカーブパターンと思われる。(三木 太一)

13. 漏斗胸における骨性胸郭

漏斗胸は、前胸部胸郭変形により胸郭内臓器の圧迫症状、呼吸機能異常をもたらすといわれている58)。本症に対し最近では、外科的治療が行なわれ良好な成績が報告されている。この外科的治療は前胸部胸郭再建術と考えられるため、術前の骨性胸郭を十分に検討し理解する必要がある。ここでは、漏斗胸の骨性胸郭の特徴に関し詳述する。

a. 方法と対象

以前より、われわれの教室では漏斗胸評価のためFunnel index, Slime index, clinical index とともに胸部単純X線、胸部CT、モアレトポグラフィーを併用してきた56,60)。今回、漏斗胸スクリーニングという意味より漏斗胸臨床病期分類と胸部単純X線所見より、漏斗胸骨性胸郭の検討を行なった。
胸部単純P-A X線像より、前胸部肋骨走行線と体軸のなす角度を肋骨走行角として両側第3~6肋骨に関して測定した。また、胸部単純側面X線像にては、第3~6肋骨走行線と体軸のなす角度を側面肋骨走行角として測定した(図Ⅰ-82)。
また、前胸部胸郭程度の検討のためP-A X線像にて胸郭最大横径(A)と、側面像にての胸郭最大径(B)、胸骨最陥凹部分での胸骨背面と胸椎前面との距離(C)を測定し、前胸部最陥凹点での胸郭前後径比(C/B)、胸郭前後径・横径比(C/A)を計算した(図Ⅰ-83)。その他、胸椎変形として側彎症についての検討目的にて、側彎症の有無、Cobb角、Ferguson角などを測定した。


以上の結果と、漏斗胸臨床病期分類とを比較検討した。
対象は、1985年4月より1985年12月までに入院または外科治療を行なった連続100例の漏斗胸症例で、平均年齢11.1±8.23(3.~42)歳、男女比72:28であった。

b. 結果

 前胸郭変形および肋骨走行角に関して表Ⅰ-31の結果が得られた。前胸部胸郭変形に関しては、漏斗胸臨床病期と相関をもってC/A比が変化を示した。また、これは年齢が高くなるほど前胸部胸郭変形が強くなる傾向もみられた(図Ⅰ-84)。また、病期が進むと胸郭前後径(C/B比)は0.803±0.084(gradeⅡ)、0.647±0.129(gradeⅢ)、0.348±0.180(gradeⅣ)となり胸郭扁平化がみられた。
肋骨走行に関しても病期が強くなると前胸部肋骨走行、側胸部肋骨走行が急峻になる傾向が判明した。今回の検討にては右側第3~第5肋骨の前胸部肋骨走行角、側胸部肋骨走行角について漏斗胸臨床病期gradeⅡとgradeⅢとgradeⅣとの間には有意の差が認められた。


胸椎側彎に関しては、Cobb角2度以上認められた症例は、漏斗胸臨床病期gradeⅡで16症例(44.4%)、gradeⅢで38症例(66.7%)、gradeⅣで6症例(85.7%)であった。全症例中Cobb角10度以上をみた症例は30症例(30%)であった。
漏斗胸に合併した側彎は、左右両側に認められたが、主として右側凸の変化が多かった(表Ⅰ-32)。また、病期が進むほど胸椎側彎が強くなる傾向がみられ、とくにgradeⅡとgradeⅣとの間には有意の差が認められた(図Ⅰ-85)。

c. 考案

漏斗胸は前胸部陥凹を特徴とする胸郭変形と考えられる61)が、原因としては遺伝因子、環境因子などさまざまなものが考えられ、現在なお統一した見解は得られていない。しかし、この胸郭変形による心臓および肺への圧排、さらにおのおのの機能異常が認められていることは従来より報告されてきた62)。現在漏斗胸に対する治療は、主として外科手技が用いられている。この中には、金属ストラッド法、胸骨飜転術、胸骨挙上術などさまざまな術式が含まれている。これらは、いずれも漏斗胸胸郭をできるかぎり正常胸郭へ戻す再胸郭形成術と考えられる57)。このことより、漏斗胸骨性胸郭の特徴を知ることは外科治療において非常に重要なことと思われる。一方、漏斗胸検索法としては胸部X線像のほかCT像、NMR像、モアレトポグラフィー像などいろいろあるが、スクリーニング法としてより簡便なのは胸部単純X線所見である。この観点より、漏斗胸評価のため、胸部骨性胸郭検索とその特徴を検討した。表Ⅰ-31、Ⅰ-32からも明らかなように漏斗胸骨性胸郭の特徴としては、胸骨陥凹と両側肋骨の下方偏移が認められた(図Ⅰ-86)。これは、加齢とともに強くなる傾向を示しているが、この点に関しては今後さらに検討が必要である。漏斗胸に合併した側彎もCobb角10度以上を示した症例は30%で、これは旭川医大による6~12歳の側彎症発生頻度の1.37%に比べ、明らかに高い合併率を示していた。これは、前胸部胸郭変形により、非生理学的な両側肋骨走行による2次的な側彎と考えられる。
以上、胸骨陥凹、肋骨走行の下方偏移、胸骨側彎などは前胸部胸郭変形が強くなるほど、偏移が強くなる傾向があり、また加齢とも強い関係があることがわかった。これらのことより、外科治療の時期、方法がよりいっそう適切に施行されることを期待する。(板岡 俊成)

14. 漏斗胸手術後の骨髄シンチグラム

漏斗胸患者に対し、胸骨、肋骨、肋軟骨の骨性胸郭の矯正を行なうことで胸郭変形を修復している。胸骨飜転術においては、体より完全に遊離したプラストロン(plastron)を再固定している。このため遊離したプラストロンへの血行は完全に遮断される。一方、胸骨肋骨挙上術においては、余剰肋軟骨部切除後再固定するため、胸骨への侵襲はほとんどなく、血行も保たれる。これら2つの術式を行なった症例に対し、術後種々の時期に骨髄シンチグラムを施行し、それぞれの術式による骨随機能の障害度、時期による変化などを検討した。

a. 対象と方法

1979年4月より1984年6月までに当教室において漏斗胸手術を行なった症例から無作為に胸骨飜転術例23例(男19例、女4例)、2~32歳平均13.6±8.6歳、胸骨肋骨挙上術11例(男のみ)、5~16歳平均8.1±3.2歳、計34例を対象とした(表Ⅰ-33)。


術後2か月以内に撮影したものを近接期、2か月以上最長5年後に撮影したものを遠隔期とした。うち5年後に撮影したものをとくに( )群で表わした。撮影にて、胸骨が柄部、体部ともに完全に描出されていたものを(⧺)、ほぼ描出されているが、一部欠損部を認めるものを(+)、描出不足か、描出されなかったものを(-)とした。主に右前45°で撮影されたもので判定した。骨髄シンチグラフィーは、トランスフェリンを結合し63)、赤芽球系に集積する111In-chloride (111In-Cl3)を静注72時間後に撮影した。

b. 結果

術後の近接期、遠隔期における骨髄スキャンの所見を胸骨飜転術(STO)と胸骨肋骨挙上術(SCE)別に表Ⅰ-34に示す、SCE群では、近接期において8例中3例が良好に描出され、2例に一部欠損を認め、3例は描出不良であった(図Ⅰ-87)。一方、STO群では、近接期6例中全例、描出不良か認めなかった(図Ⅰ-88、Ⅰ-89)。遠隔期においては、17例中良好に認めたもの4例、一部欠損4例、不良9例であった。このうち、術後5年経て骨髄スキャンを行なった群では6例中2例が良好、1例のみが描出をほとんど認めなかった。

c. 考案

骨髄シンチを行なうことにより造血髄の分布、広がりを知ることができる。111In-Cl3は静注後速やかに血清トランスフェリンと結合して 111In-トランスフェリンとなり血中で鉄代謝系に類似し、骨髄で赤芽球に取り込まれる64,65)。
胸骨肋骨挙上術においては、肋軟骨部の過剰軟骨切除後再固定を行なうので、胸骨自体への侵襲はない。固定用に使用した糸による動脈系(肋間動脈、内胸動脈からの穿通枝)の結紮や電気メスによる止血により、近接期症例においても描出欠損像を示したものがあった。一方、完全な血行遮断を伴う、胸骨飜転術においては、近接期において、離断部以下の胸骨体において造血髄の分布はないか不良である。このことより、この術式は血流遮断により、胸骨骨髄能の低下を伴うことになる。しかし、遠隔期においては、描出例を17例中4例に認め、さらに5年経過例では6例中2例に完全なる描出を認め、不良なのは1例のみである。このように完全血行遮断を伴う術式ではあるが、高い比率で側副血行路の発達に伴う血流の再開により、骨髄機能が回復してきたものと思われる。渡辺ら66)の報告によれば、術後1年以上の遠隔期において26例中3例が骨スキャンで、27例中9例が骨髄スキャンで異常を認めているが、残りは完全に一度離断されたプラストンへの血行の回復により、正常化してきたとしている。われわれも、近接期では描出されなかった胸骨が、かなりの時間は要するが、多くの症例で、血行の再開によりいずれ描出されるようになると推定した。

d. むすび

漏斗胸患者の手術後に、骨髄シンチグラフィーを施行し、胸骨肋骨挙上術では、骨髄機能は比較的よく温存され、一方胸骨飜転術においては、近接期では、骨髄機能はいったん障害されるが、多くの症例で遠隔期にて回復してくることがわかった。(前 昌宏)

15. 気管、気管支の変形

漏斗胸は前胸部陥凹に伴い、心肺の圧迫所見を有している。また、それとともに、気管、気管支の変形を合併していることが多く、少数ながらこの合併症に関しての報告も散見される67)。この気管支変形は、前胸部陥凹による気管支の圧迫変形だけでは、十分に説明がつかないところが多く、いわゆるbronchomalaciaなど、気管支自体の疾患との鑑別が問題になっている。

a. 気管支の変形部位と程度

図Ⅰ-90はわれわれが気管支鏡下に行なった観察部位を示している。この10か所の中で、気管支変形の発生率がもっとも高いのは、左主気管支で、次に気管、右主気管支に多くみられる。その変形の程度は漏斗胸症例の中でもまったく変形のないものから、ほとんど閉塞しているのまでいろいろある。そのため、ここでは図Ⅰ-91のように5型(O,A,B,C,D)に分類している。このうちB以上の変形をもって、気管支変形ありとし、発生率などの計算を行なった。


気管支変形が漏斗胸の前胸部陥凹による圧迫のみから発生するとすれば、前胸部陥凹の程度(gradeⅠ~Ⅳ)、漏斗胸のtype(右優位型、左優位型、対称型)、または手術による前胸部骨格の修復前後において、気管支変形の程度は変化するものと考えられる。そこでそれらを追求するため、漏斗胸手術前後で図Ⅰ-90に示した気管支鏡検索を施行しえた41例(表Ⅰ-35)を対象に調査を行なった。

b. 漏斗胸のtypeと気管支変形

漏斗胸は、最陥凹部から明らかに正中よりも右前胸部にある右優位型と、左にある左優位型、ほぼ中央にある対称型と大きく3つのtypeに分けられる。このうち発生頻度の少ない左優位型は除き、右優位型、対称方漏斗胸に加えて前胸部の突出のみられる鳩胸を対象としている。図Ⅰ-92に、気管支内観察部位10か所のそれぞれのtypeの漏斗胸、および鳩胸の気管支変形の発生率を示した。右主気管支(MB)では右優位型のほうが発生率が高い傾向にあり、右側胸壁の陥凹が同側の主気管支に影響するように思われるが、左主気管支や、その他の気管支観察部位では、その傾向はみられない。つまり左側気管支では右優位型、対称型で気管支変形発生率に有意差はなかった。またもっとも興味あることは、前胸部突出を呈する鳩胸の症例でも、右主気管支、気管に明らかな変形をきたすものがあるということである。

c. 前胸部陥凹程度と気管支変形

漏斗胸の前胸部陥凹の程度は、外見上のgrade分類とCTによる分類がある。外見上の分類では、正常よりやや陥凹しているものをgradeⅠ、胸椎前縁に達するくらいお陥凹をgradeⅣとしてその間をgradeⅡ、Ⅲと分類している。はっきり陥凹しているものをgradeⅡ、その程度の強いものをgradeⅢと考えてよい。CTによる分類は、最陥凹部(ほとんどは剣状突起のレベルで撮影)の胸部CT像により次のように算出されている。これをCT indexとして表Ⅰ-36のようにCT gradeを決定した68)。

図Ⅰ-93は気管支内のそれぞれの観察部位における気管支変形発生率を外見上のgrade別に比較したものである。発生率はどの観察部位でもgradeとは無関係と思われる。左主気管支はもっとも変形のみられる部位であるが、図Ⅰ-94に示すように、術前の漏斗胸のCT gradeが進んでいても、その変形発生率はどのCT gradeでも同様であった。

d. 漏斗胸手術と気管支変形への影響

図Ⅰ-94は気管支変形の発生率がもっとも高い左主気管支に注目して、漏斗胸手術前後での気管支変形の発生率を比較したものである。漏斗胸の前胸部変形に対する手術は、心肺の圧迫所見を除くことが第1の目的であり、図Ⅰ-94上段に示すようにCT gradeからみても、術後のCT gradeは著明に改善している。つまり術後はほぼ正常胸郭に近づいているということである。下段には、前述したように術前の気管支変形のCT gradeによる気管支発生率を示すとともに、術後の気管支発生率も示している。CT gradeⅡ、Ⅲ、Ⅳともに術後は著明な前胸部陥凹の改善をみるにもかかわらず、気管支変形の発生率は少なくとも減少の傾向はみられない。

表Ⅰ-37は、術前後の、気管支変形程度(図Ⅰ-92)を各気管支観察部位別に示したものである。少数ながら術後に気管支変形の改善をみるものもあるが、どの観察部位においても、ほとんど術前後の程度差はない。

e. 気管支変形と年齢

図Ⅰ-95には、10歳以上とそれ以上の年齢での気管支変形の発生率を示している。この中で右主気管支(RMB)以外は両者の有意差は認められない。図Ⅰ-96は年齢別に3群に分けた左主気管支の変形発生率であるが、上段のようにCT indexでは、3群に有意差はあるが、期環指変形の発生は、その逆にCT indexの低いもの、つまり前胸部陥凹の強いものでその変形発生率が低い傾向がみられる。

f. まとめ

漏斗胸に非常に高頻度に合併する気管、気管支の変形は、左主気管支にもっともよくみられる。その程度は、前胸部陥凹の程度や漏斗胸のタイプとの間に相関は認められない。また、手術により前胸部陥凹の程度が改善されても気管支変形の改善はみられないことがわかる。以前の統計68)では、気管支変形の程度と前胸部陥凹の間に、正の関係がみられたが、その後、その関係からはずれるものが多く発見され、今回の調査では、ほとんどその関係が見出せなかった。
漏斗胸の気管支変形の成因として、前胸部陥凹による気管支の圧迫と気管支自体の疾患が考えられるが、これまでの調査では、後者の成因のほうがより考えられるようだ。しかしながら今回の調査は、入院中の患者だけにかぎられており、手術後の長期経過後の気管支の観察はされておらず、また病理学的にたとえばbronchomalaciaなどの所見を得ているものはない。そのため、気管支自体の疾患が確認されているわけではなく、今後さらに長期間のfollow-upが必要と考える。(毛井 純一)


16. 漏斗胸と乳房形成

一般に乳房は思春期まで未発達であり、思春期以降主に脂肪と他の結合組織の発達により急速に肥大していくが個人差が大きい。漏斗胸患者はやせ型の体型が多いため、乳房の小さい患者が多いが、それ以上に乳房の発育不全を認めることが多い。
当科における全漏斗胸手術症例のうち成人女性症例は約6%であり、その約80%と高率に乳房発育不全を認めている。成人女性の漏斗胸患者が乳房発育不全を伴う場合、精神的な悩みも非常に大きく単に胸郭を形成し心および肺の圧迫の除去を行なっても、精神的な面も考えると完全な治療とはならない。このため精神的な面に対する治療としての豊胸術を根治術に合併して行なう必要のあることも考えておかなければならない。

a. 乳房発育不全の原因

漏斗胸における乳房発育不全の原因は明らかとはなっていないが、その1つに乳腺および乳房への血行が関係していると思われる。
乳腺および乳房への血行は、主に内胸動脈および肋間動脈の枝により供給されているが、漏斗胸では陥凹の優位側の内胸動脈の貫通枝が発育不全の傾向を示している。これによるためか漏斗胸患者は若年者では左右対称型の陥凹も示す症例が多いのに対し、年長者では成長とともに一側に偏位した陥凹を示す傾向にあり、これに伴い乳房も陥凹が優位である側の発育不全をきたしてくる。このため前胸壁の左右の不対称性はさらに著明となってくる。

b. 乳房発育不全に対する治療

教室では、現在乳房発育不全に対する豊胸術にはナチュラルY乳房補形材(マークハム社、USA)を用いて行なっている(図Ⅰ-97)。
ナチュラルYは、低粘度性シリコンゲルをシリコン被膜でおおい、内部にはY隔壁を有しており形状がくずれにくく、また表面は1mm厚のポリウレタンでカバーされているため組織の内部成長はないとされている。ナチュラルYを用いた術式には乳腺組織と大胸筋筋膜の間に入れる術式と大胸筋下に入れる術式とがある。
手術法は、最初に定型的に胸骨飜転術または胸骨肋骨挙上術を行なう(図Ⅰ-98)。次に左右の乳腺組織と大胸筋筋膜の間を切離し、ナチュラルYを挿入するポケットを作成する。ポケットはナチュラルYよりやや大きくすることにより挿入後の周囲組織の緊張を少なくできる。この際、止血は十分に行ない術後のポケット内の出血を少なくすることが必要である(図Ⅰ-99)。


次にポケット内にナチュラルYを挿入し固定を行なう。固定が不十分であると術後ナチュラルYの位置が変わることがある。また挿入するナチュラルYのサイズは左右の乳房のバランスを考え適当なサイズを使用する。日本人では#0から#2までのサイズが適当であると思われる。次にポケット内に吸引チューブを挿入したのちポケットを閉鎖する(図Ⅰ-100)。
ナチュラルYを挿入したことにより皮膚に緊張がかかるため皮膚縫合は慎重に行なう。

c. 術前後の評価

術前後の評価にはモアレトポグラフィーを使用している(図Ⅰ-101)。症例は右優位の漏斗胸であり、右乳房の発育不全を認めている。術後は左右対称となっており、豊胸術により正常に近い前胸壁となっている。
次の症例は右胸壁の陥凹が著明な右優位型の漏斗胸であり右乳房の高度な発育不全を呈している(図Ⅰ-102)。このため右はナチュラルY#1、左はナチュラルY#0を使用し左右の対称化を行なっている。術後は左右の乳房はほぼ同じ大きさとなり、前胸壁も左右対称となっている。
両症例とも外見上は通常の乳房の形となり、満足した経過が得られている。

d. まとめ

成人女性の漏斗胸症例では高率に乳房発育不全が合併する。とくに前胸部陥凹が一側に優位した非対称性漏斗胸の場合、単に胸郭の形成を行なっても不十分な結果となることが多い。こうした場合、豊胸術をあわせて行なう必要があると考える。(中島 秀嗣)

17. 漏斗胸手術の歴史と現況

a. 適応

軽度な漏斗胸は手術の対象とならない。われわれは、漏斗胸をⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度、Ⅳ度に分類しているが、Ⅰ度は手術の対象外としている。Ⅲ度、Ⅳ度は手術することとし、Ⅱ度の症例は、case by caseで手術対象としたり、しなかったりしている。
患者の症状としてはかぜをひきやすい、気管支炎を起こしやすい、喘息様発作があるなどがあるが、無症状の例も多い。
手術の目的は美容形成的なものと、将来生じる可能性が高い側彎症、心や肺の圧迫などの予防のことが多い。
手術を施行する至適年齢については、意見の分かれるところであるが、幼児のほうが胸骨挙上術が容易にできるので、美容上はきわめてすぐれている。手術創の瘢痕の長さは患者の身長などの成長に比例して成長しないので、子供のうちに手術したほうが、成人で手術を行なうより手術創が短くなる。またこの年齢では、手術が容易のため入院期間も10日間くらいですむ。
15歳を超えた患者は、胸骨飜転術にせよ、その他の術式にせよ、3~4週間の入院が必要となり、骨が硬いため、手術がむずかしく、骨固定も容易ではない。
手術の最少年齢であるが、原則として3歳以上と考えている。生下時、または1~2歳の乳幼児では胸郭の奇異運動が漏斗胸に類似する。3~4歳までまつことにより、奇異呼吸による漏斗胸は消失する。
われわれの手術症例の1例を除きすべて満3歳以上である。その例外としての1例は11か月の男児で、著明な奇異呼吸のため呼吸困難、呼吸不全を生じているので、胸骨飜転術を施行し、奇異性運動を減少せしめた。
4~5歳を超えてから漏斗胸が自然治癒したという報告69)もあるが、これはまれな症例と考えられる。患者家族からの病歴聴取では、「漏斗胸の陥凹程度は、おおよそ一定で、成長するとともに、少し目立つようになった」というのが一般的である。

b. 初期の漏斗胸手術

手術手技の歴史的考案はRavitchの教科書69)に詳述されているが、ここでは、各代表的な手術手技と、本邦での諸家の手術法について述べる。
最初の手術はドイツ人Ludwig Meyer70)によって、1911年5月5日に行なわれた。患者は16歳男で胸郭が変形強度のため、呼吸困難があり、陥凹部ににぎりこぶしが入るくらいであった。この手術のため、Meyerは変形肋軟骨の切除を行なった。しかし、小範囲切除だったので、それほど効果があったとは思われない。
1913年、Ferdinand Sauerbruch71)は、左の5番目から11番目の肋軟骨を切除した。彼は肋軟骨膜も切除するとともに、胸骨もできる限り切除した。一方、彼は1931年肋軟骨切除後、胸骨の裏側にひもを通して、胸骨を体外から吊り上げることも行なった。
吊り上げ後8日目にひもをはずしたところ、胸骨が再度陥凹したので、またひもを通して患者体外から胸骨を吊り上げたという。
これが、肋骨切除と胸骨吊り上げ(external traction)併用の最初の例であろう。 
1925年プラグ(Prague)のZahradnícek72)は、16歳男の患者に経皮的に胸骨にワイヤーを通し、体外から胸骨を吊り上げた、この方法は、次々と追試されたが、経皮的な吊り上げのみでは、陥凹胸骨の修復が困難であることがわかった。
1930年Alexander73)は、①左側4.5.6番の肋軟骨切除、②第2肋間から第4肋骨までの胸骨切除、③右側4.5番の肋軟骨切除を施行し、これによって心臓の圧迫がなくなったという。

c. 胸骨挙上術

漏斗胸の手術術式には諸種あるが、胸骨挙上術と胸骨飜転術とに大別される。これらの術式の中に、さらにいろいろな創意・工夫があるため、諸家の手術手技の種類は実に雑多となっている。
1)Brownの胸骨挙上術
現在使用されている術式の中で、もっとも古いものの1つである。サンフランシスコのA.Lincoln Brown74)は、成人と幼児の漏斗胸手術法を別々に述べている(図Ⅰ-103)。
成人に対しては、変形肋軟骨を3番から7番目まで、各2cm切除する。胸骨体部と柄部の間で、横に舟型の骨切開を行なって、この部をワイヤーで固定する。剣状突起は切除する。第5肋軟骨を胸骨にワイヤー固定し、体外から胸骨を牽引する。このBrownの胸骨挙上術は、その後の多くの手術術式の基礎となっている。われわれが現在行なっている胸肋挙上術(SCE)も、体外からの胸骨牽引を除けば、Brown原法に類似である。
一方、Brownは乳幼児に対して、簡単な術式を述べている。これは剣状突起と胸骨の移行部で皮膚を3cm切開し、胸骨下と横隔膜の間にある靱帯(substernal ligament)を切開するというものである。しかし、この術式は多くの追試者から否定的に取り扱われた。
Sweet75)は、漏斗胸の変形は骨性のもので、胸骨下の靱帯のみ切断しても、胸郭の変形はなおらないと述べた。Sweetは剣状突起切断後、3~7番の肋軟骨を切断し、第2肋骨の下で胸骨に横方向の舟型切開を加え、ワイヤー固定した。

2)ハンモック固定法
1961年May76)はhammock supportという方法を試みた。これは変形肋軟骨切除後金属メッシュを胸骨の下(内側)に入れ、そのメッシュの両側を肋骨に固定するものである。Hoffman77)はMarlex meshを使用している。Daniel78)は肋軟骨膜や肋間筋を縫い縮めてhammock supportとした(図Ⅰ-104)。
3)Ravitch法
Ravitch法は基本手術(basic operation)ともいわれており、現在の標準手術である。変形肋軟骨切除後、胸骨体、胸骨柄後面に横切を入れ、ここに肋骨骨片を楔状に挿入固定する(図Ⅰ-105、図Ⅰ-106)。第2肋軟骨を斜めに切断し、胸骨を挙上するように重ね合わせて縫合する。

4) 名市大式胸骨挙上術
水野ら79)はRavitch法の問題を次のように指摘している。
(1) 陥凹横径の幅広い症例では前胸壁の固定が得られなくなる。
(2) 原法のまま胸骨のねじれを矯正できない。
(3) 胸骨下端に不自然な凹みが生じ、成長とともに凹みが増強される。
(4) 胸骨が長い成人例では上部3点支持のみでは支持が不十分である。
そこで、水野、正岡らは名市大式胸骨挙上術を発表している。それはBrown原法に類似しているが次のような術式である。
腹直筋前鞘をできるだけ広範に皮膚と剥離し、胸筋群を電気メスにて変形胸郭全体にわたる胸骨および肋骨、肋軟骨から剥離する。
各肋軟骨の最陥凹部で肋軟骨を1cmくらいずつ切除する。
胸骨を第5肋間で骨刀、線鋸など用いて切断する。これは腹直筋と胸骨とを再縫合する際に筋肉の裂けによる縫合不全を避けるため胸骨下端を縫いしろとして残すためである(図Ⅰ-107)。
胸骨切断部で内胸動脈を結紮切断し、上下端とも胸骨側に付着させたまま胸骨周囲の軟部組織を電気メスにて剥離しながら挙上しておく。次いで最下位の正常肋軟骨(通常は第2肋軟骨)を前面内側より後面外側斜めに切断し胸骨挙上後の側方支持にそなえる。

胸骨をさらに前方へ挙上しながら、支持肋軟骨の胸骨付着部直上で胸骨後面に切開を加え、適当に成形した肋軟骨の楔を挿入し胸骨を正しい矯正位置に縫合固定する。
胸骨の矯正位固定を行なう前に、胸骨後面に斜めに切開を加え、肋軟骨の楔を挿入する。つづいて前に切離した第2肋軟骨を重ね合わせて縫合固定する。
胸骨挙上固定が完了した胸骨上半部と腹直筋が付着した下半部を再縫合するにあたっては下半部の胸骨を十分頭側へ牽引し腹直筋に適当な緊張が加わる状態で縫合したほうが、より良好な矯正効果が得られるので、通常上半部胸骨の下端を一肋間長ぐらい切除して胸骨の長さを調節する。
漏斗胸症例の前面肋骨は極端に鋭角をなし縦に走っていることが多いので、これを前方へ十分挙上し牽引すると、彎曲し陥凹していたものが直線的になるため相当の長さがあまってくる。これを左右に偏りが生じないように注意しながら1本ずつ切除短縮し胸骨側の肋軟骨端に再縫合していく。
5) Ravitch変方(保坂)
保坂80)はRavitch法に準じた胸骨挙上法にstrut bone graftによる架橋支持法を加えた。加橋支持のため、脛骨または腓骨を使用した(図Ⅰ-108)。

6) Ravitch変法(伊藤)
伊藤81)は、Ravitch法にhammock supportを追加し、Ravitch変法としている。切離された両側の肋軟骨膜、肋間筋を胸骨筋を胸骨の後面で縫合する。胸骨体下部に後方からの支持を与えるためである

d. 胸骨飜転術

プラストロンをとり、それを飜転して患者に再固定する。陥凹していた胸骨が飜転により突出することになる。本法は1927年、HoffmeisterやLexerらによって行なわれたが、文献上、術式が述べられているのは、1944年Nissen82)によってである(図Ⅰ-109)。
1)遊離胸骨飜転術
Nissenは胸骨を飜転するのみでなく、それを90度ずらして再固定した。すなわち、胸骨の横軸が縦になるように固定した。1954年、Nissenは本法を成人に最高の方法だと述べている。
1953年Wanke83)も5例の胸骨飜転術を行なっているが、彼は胸骨を前と後の2つの部分に切断し、後の半分のみを使用して飜転術を行なった。
1954年にはJean and Robert Judet84)の報告がみられる。最近ではHawkins85)の報告がある。いずれも、胸骨飜転術がよい方法だと述べている点で一致している。
本法の最大の欠点は、遊離胸骨の血流が十分か否かという点である。東女医大での多数の症例の中には、遊離胸骨が線維化した例もあるが、形態は保たれている。骨髄シンチグラムなどで、飜転した胸骨の像が描写不十分でも、飜転胸骨の形は長期にわたって保たれるので胸骨を遊離飜転させても、十分、手術の目的は達せられるものと思う。
2)腹直筋有茎性胸骨飜転術
1957年Scheer86)は腹直筋をつけたまま、有茎の胸骨飜転術を行なった。胸骨への血流を温存するためである。
この試みはわが国でも多くの追試者87.88)がいる。

光岡89)は腹直筋有茎性胸骨飜転術をさらに改良し、非飜転変法を考案した。すなわち、プラストロンを飜転せずに、そのまま右または上下に移動し、陥凹部が消失するような位置で、プラストロンを再固定する方法である(図Ⅰ-110)。
3) 内胸動静脈吻合法
平山らは胸骨飜転術後、胸骨への血流を温存するため、内胸動静脈の吻合を一側で行なっている。内胸動静脈の直径は成人では平均1~1.5mm大であるが、これを顕微鏡下で10-0ナイロン糸を使用して吻合する90.91)。これによって、胸骨への血流が保たれ、手術後の再陥凹などがみられないという(図Ⅰ-111)。
また、松村、田口ら92)による内胸動静脈血流温存による胸骨飜転術は、胸骨飜転術に先だち、内胸動脈を胸骨横断部より上下方に剥離し、飜転に際してこれら血管を飜転胸骨前面で交叉させる方法である。本法では、血管を吻合していないが、そのかわり胸骨飜転により内胸動静脈が交叉することになる。

e. 金属副子法

変形肋軟骨を切除したあと、胸骨を固定するために、金属を挿入することも行なわれた。
Brandt93)はKirschner wireを使用した。
C.L.Holmes94)は胸骨柄から胸骨体までSteinman pinを挿入し、この金属を2~3週間もちあげることを行なった(図Ⅰ-112)。
Grob95)は経皮的に横方向にピンを入れ、陥凹胸骨を2~3週間挙上固定した。
Rehbein96)は軽い金属を左右の肋骨に橋渡しし、このアーチ状の金属棒に胸骨を固定した。左右の金属棒は、左右の肋骨骨髄の中に、打ち込まれるようにした(図Ⅰ-113)。
Rehbein法では通常3組(左右1枚ずつの金属支柱を1組とし)の金属支柱を使用するが、症例により2組で足りる場合もある。胸骨や肋軟骨を金属支柱に吊り上げる際に、Rehbeinは初期の頃普通の銅線を使用していたが、その後金属帯(細いテープ状の金属帯)を使用している。


北村ら97)もRehbein法を施行し、本法の検討として、彎曲変形した肋軟骨を良い形にして吊り上げ固定することは決して容易ではない。Strutの固定が不確実でときに反転し凹形になることがある。固定用網線の術後抜法にかなり苦労することがあるなどをあげている。
渡辺ら98)は金属支柱としてA-Oプレートを使用している。
信岡ら97)はmetal strutを使用しているが、このstrutが中央部ではずれるようになっており、手術後の取り出しが容易なように配慮した。

f. 美容形成手術

Massonら100)はsilastic implantを行なった。シリコンをダクロメッシュにつつんで、組織親和性をよくし、陥凹部に埋没した。
最近、わが国でも漏斗胸手術にポリ乳酸樹脂やセラミック人工骨が使用されるようになった101)。

g. 患者年齢による手術手技の選択

いろいろな術式を患者の状態、年齢によって使い分ける試みもBrown74)以来多数みられる。Brownは成人に対しては胸骨挙上術、乳幼児に対しては胸骨靱帯切断術を適応とした。
われわれは、15歳未満の症例に対し、SCE(胸肋挙上術)、15歳以上の症例に対しSTO-O(胸骨飜転重畳術)を適応と考えている。幼小児では、胸骨、肋骨、肋軟骨に可動性が大きいので、容易にSCEが可能である。15歳以上の胸骨、肋骨、肋軟骨が硬く可動性の少ない症例では胸骨挙上術を行なうことがかなり困難であるので、胸骨飜転術を行なうことにしている。
渡辺ら98)は12歳までの年少児症例に対し遊離胸骨飜転術、12~17歳までの症例では内胸動脈を上腹壁動脈から温存した腹直筋有茎胸骨飜転術を用いている。そして青年期から成人例では、金属strutによる胸骨挙上術を選択している。
松村ら92)は15歳未満症例には腹直筋有茎性胸骨飜転術、15歳以上症例には内胸動静脈温存胸骨飜転術を標準術式としている。
年齢とともに骨、肋軟骨が硬くなり変形も強度となるので、患者の年齢によって術式が選択されるべきものと、著者らは考えている。どの年齢に対し、どんな術式がすぐれているかにつき、現在、統一的な見解は生み出されていない。この解決は今後の問題と考えられる。(横山 正義)

18. われわれの手術法

われわれは各種の術式を行なってきたが、そのおもなものは胸骨飜転術と胸肋挙上術である。

a. 胸骨飜転術(sternal turnover;STO)

第1例は1959年7月、11歳男児に施行されて以来術直後の呼吸管理も容易であり、矯正効果はよく、10年以上にわたる遠隔成績もきわめて満足すべきものであることから、近年世界的に普及をみるに至った方法である。
手術は挿管麻酔のもとに陥凹部に一致した正中また乳房下横切開を行ない、一層に大胸筋および腹直筋を剥離し、胸骨および肋軟骨、肋骨を露出する。男性の場合は皮下脂肪組織が少なく縦切開を、女性の場合は美容上の問題をも考慮して横切開を主として用いている。陥凹が胸骨柄にまで及んでいる場合においても、乳房下横切開を十分側方にまで行なうことにより容易にアプローチが可能である。左右の肋軟骨、肋骨は陥凹部のやや内側にて肋骨弓部より上方に向かって肋間筋とともに切断する。この際できれば肋軟骨の部分にて切断できれば、あとの縫合固定の折に手技が容易である。切断部の両脇をタオルクリップで引っ張り合うように持ち上げることにより肋軟骨膜下または肋骨膜下に切断することが簡単にでき、習熟すれば肋間動静脈を損傷せず、出血もほとんどみずに切断が可能である。肋軟骨膜は胸骨に向かって肋軟骨を剥離し、胸肋関節の部位にて肋軟骨より切離する。
両側の内胸動静脈はこの操作により残存した肋軟骨膜に付着して存在する。以前は内胸動静脈を結紮切離していたが、現在のところどちらの方法が有利であるかの結果は出ていない。胸骨は陥凹のみられる一肋間上でストライカーにて切断し漏斗胸胸壁を取り出す。止血は電気凝固にて確実に行なう。内胸動静脈上腹壁動静脈、肋間動静脈そして大胸筋の裏面よりの出血を注意深く止血する。
遊離した漏斗胸胸壁の肋間筋および胸横筋は可及的に除去する。Flatteringは凹型変形をきたしている部分に割線を入れ、伸展させることにより平坦なものとする。この割線は取り出した漏斗胸胸壁の強度のために必要最小限にとどめる。飜転した位置では剣状突起および第6、第7胸肋関節が突出することがあり、この場合は突出部を削り取る。三角形の二辺の和は一辺よりも長い原理から漏斗胸の肋軟骨部はかなり短縮することができるが、縫合する断端面の関係もあり、ここで短縮するとしても若干の短縮のみとする。胸骨端は垂直に切断したまま、もしくは飜転位で上になる部分を楔状に削り取る。このとき、骨膜は可及的に残すようにする。
胸骨は強い2本の鋼線(ψ=0.75mm)にて幅広く確実に固定する。最近教室では胸骨柄に及ぶまで扁平な症例では胸骨を重畳することにより、上胸部の術後の形態に良好な結果を得ており、初期の胸骨飜転術にみられた矯正の不十分さの欠点を十分に取り除くことができるようになった。この胸骨重畳により胸骨断端は断端面どうしの二次元的な固定ではなく、胸骨の側面どうしにより三次元的に固定できる。同時にそれぞれ相対する肋軟骨または肋骨は約一週間ずつ上に持ち上げられ胸郭の前後径を増加させるという効果も有している(sternal turnover +overlapping of the sternum;STO-O)。
タオルクリップにて体側の肋軟骨または肋骨を引き上げ、余剰の肋軟骨部分の観察を行ない、切断面を適合させるべく余剰の肋軟骨を飜転胸骨から切除しTevdek No.3糸にて縫合固定する。胸骨の位置は中心である必要はなく、非対称性漏斗胸の場合は陥凹側の方向にずれて固定する場合もある。取り付けた胸骨および肋軟骨の上下に1/8インチまたは3/16インチの排液管を2~6本(体重や出血量によって異なる)、また開胸した場合は胸腔内にも同排液管を1本挿入し、陰圧約40~120mmHgで吸引する。筋層、皮下組織、皮膚を縫合して手術は終わる。適正に行なわれた本術式の術後の胸壁の固定はよく、奇異呼吸もみられず、術後の呼吸管理はきわめて容易である。
本術式に加えて腹直筋や内胸動静脈を有茎で飜転する方法も報告されているが、これらの方法も報告されているが、これらの方法では血管系(とくに静脈)の捻転により十分な血行は望めず、他方、単純な胸骨飜転術での骨壊死の可能性およびその生着という問題については著者の一人和田の1,000例を超える臨床経験からも無茎胸骨飜転術STOの安定性は確立されたものといえよう(図Ⅰ-114)。

なお、胸骨飜転術と同時に6例も開心術、2例の肺手術、2例の縦隔疾患、7例のペースメーカー植え込み術、7例のナチュラルYによる乳房形成術および5例の前回手術により植え込まれたprosthesis の摘出術を施行し、いずれもきわめて満足すべき結果を得た。

b. 肋骨挙上術(costal elevation;CE)

この術式は高度の非対称漏斗胸で、胸骨の変形あるいは位置異常の軽度のもの、および一側性の旁胸骨性の深い変形が適応となる。変形側の肋軟骨、肋骨のみの矯正を行なう術式である。漏斗胸の肋骨は後上方から前下方に向けて急峻に走行するがために体軸に対して著しく鋭角をなすのが特徴である。この肋骨の前端を上方に移動することにより、胸郭の前後径の増加がはかれる。
胸骨飜転術と同様に胸骨および陥凹側の肋軟骨、肋骨を露出し、変形した肋軟骨を胸肋関節近旁にて切断する。ついで変形した肋骨を側方に至るまで剥離し可動性を高めた上でタオルクリップにてもっとも有効な手術効果が得られるまで牽引挙上したのちに過剰肋軟骨を切除し、胸骨前面または1~2肋間上の肋軟骨部に固定する方法である。

c. 胸肋挙上術(sterno-costal elevation;SCE)

この術式は先に述べた胸骨飜転術+肋骨重畳法において、漏斗胸壁を飜転してもその形態が飜転前と比べてほとんど変わらない症例のあること、さらに漏斗胸の本態は肋軟骨、肋骨の過長にあることを念頭に考えられた術式である。すなわち、胸骨を付着肋軟骨から遊離し、挙上矯正位をとらせた上で過剰部位を切除した肋骨の前中心端を肋骨重畳法のごとく上方に移動し肋骨リングの斜走を正常に近づけることにより胸郭の前後径は増加し、これにより胸骨は持ち上げられる。
従来の胸骨自体に割を入れてこれをさまざまな方法で持ち上げる胸骨挙上術に対して、肋軟骨が左右に牽引しあう力により胸骨を挙上するとの考えから、胸肋挙上術と命名した(図Ⅰ-115)。本術式は胸部が軟らかい13~15歳以下の漏斗胸症例に有効である。
胸骨および肋軟骨を露出したのち、第2または第3肋骨より第7肋軟骨までを切離する。この際術式は胸部が軟らかい13~15歳以下の漏斗胸症例に有効である。

胸骨および肋軟骨を露出したのち、第2または第3肋骨より第7肋軟骨までを切離する。この際布鉗子により切断部両端を牽引挙上することにより、肋軟骨膜下に肋軟骨を切断しうる。肋間筋を側方に至るまで切離し、肋軟骨および肋骨の可動性を十分とする。布鉗子を用いて肋骨のリングの走行を正常にして、過剰肋軟骨を切除する。切除ののち、それぞれの肋軟骨を2~3本のTevdek No.3糸にて縫い合わせる。このとき、肋軟骨が胸骨を左右に牽引する力が、胸骨を持ち上げ、陥凹を解除するわけである。全体のバランスおよび肋間の距離を総合判定して切除範囲を決定する。切断端は縫着し終えたときに組み木細工のごとくちょうど合うように切断する。1/8インチの排液管を胸骨近旁に留置する。壁側胸膜損傷により開胸となった場合も同排液管挿入により対処しうる(図Ⅰ-116、Ⅰ-117)。

d. 術後管理

多くの症例では術直後、覚醒とともに抜管して問題ない。覚醒不全および扁桃肥大またはアデノイドを有している症例では術後6時間から12時間の呼吸器による管理を行ない。覚醒を促すことにより呼吸管理はきわめて安定した経過をたどる。
普通ヘモバッグなどの比較的細い排液管を使用しているために内腔閉塞の可能性があり、排液管の経路が確固となった術後4日目頃にいったん排液管の交換を行なっている。その後は排液量を観察しながら術後約1週間で排液管を抜去する。
術直後の疼痛は胸骨正中切開などに比して強いものであり、これによって呼吸運動が妨げられ喀痰喀出困難による無気肺発生がみられることもあるので、術後鎮痛剤投与は早目かつ定期的に1~2日間は行なう。
一般に術後2日で独歩を開始し、1~2週間で退院し3か月で正常生活運動が許され、術後6か月で胸部の強打にも耐えられるようになる。(笠置 康)

19. STOよりSTO-Oへ

漏斗胸は1594年Bauhinus102)が初めて7歳男児の症例を報告し、その後1911年Meyer103)が初めて手術治療を施行して以来、さまざまの手術法が考案されてきたが、その主なものは、
(1) Brownら104)に代表される胸骨挙上術
(2) 和田ら105)に代表される胸骨飜転術(sternal turnover:STO)
(3) プロテーゼ挿入などの純形態形成術
などであろう。
このうち胸骨挙上術はシーネやstrutなどの異物を挿入するため感染の機会がやや多く、また再手術が必要な点が繁雑である。プロテーゼ挿入は本疾患に対する外科治療の真の目的である胸腔内蔵器圧迫解除や、脊椎側彎・後彎や肋骨走行異常に対する矯正をなしえず、治療的ではない。一方和田の創始したSTOは、自己の胸骨および肋軟骨、もしくは肋骨を飜転することにより陥凹部を形成するというまったく独創的な方法であり、strutなどの異物を使用せず、生理的な方法である。和田らはすでに1,000例以上の患者に同法を施行しており106.107)、みるべき合併症もなく、確立された術式といえよう、しかしながら、より完璧性を望む観点からは、術後やや扁平胸であるとか、上胸部に陥凹が残るとか108)、また肋間筋、肋間動静脈、内胸動静脈などを含む前胸壁のen bloc resectionであるため、術後前胸壁の栄養障害に起因する発育障害や瘻孔形成などの合併症が起こりうるのではないか109.110)、などの疑点が諸家から指摘されている。STO原法はこれらの批判によく耐えうるものであるが、さらにこれらの諸点に明確な解答を与えるため多くの研究者により、さまざまな努力がはらわれてきた。その中でもとりわけ著者らのmodified STO(いわゆるauto strut法)を通じて、現今のSTO-O法へと術式が変わっていった。
ここではSTO-O法のもととなったmodified STOについて、その術式と考え方、およびその効果などについて論じる。

a. 方法

全身麻酔下に乳房下横切開もしくは正中切開を加え、軟部組織を骨性胸壁より鋭的および鈍的に剥離し、陥凹部を十分に露出する。次いで第2もしくは第3肋骨以下を前腋窩線近くから胸骨に向かって骨膜を剥離する。この際、肋骨および肋軟骨の上縁および下縁に沿って電気メスで切り目を入れ、ラスパトリウム、イレバトリウムなどを用いてこの部から裏面の骨膜を剥離し、表面の骨膜は剥離せずに残す。各肋骨もしくは肋軟骨は陥凹起始部よりやや外側の胸壁前後径のもっとも大きい部分にて剥離した骨膜を残して切断する。また各肋骨は十分外側まで骨膜剥離を延長し、自由な可動性を得るようにしておく。次に剥離した肋骨および肋軟骨裏面骨膜は胸骨裏面骨膜に移行するので、そのまま剥離を進め、胸骨裏面骨膜を下に落とす。Xyhoidは表層を一部切開し、胸骨裏面骨膜と切離することなく鈍的に剝離する。剝離された胸骨、肋軟骨および肋骨(胸・胸骨複合体:costo-sterno complex)は第2もしくは第1肋間にて切断する。
次に胸・肋骨複合体(costo-sterno complex)を飜転し、平板になるようにtrimmingし、もとの上位胸骨、肋骨もしくは肋軟骨に縫着するが、胸骨の部分は楔状に削り、もとの胸骨表面の骨膜を上方まで十分に剝離し、この骨膜と骨質とのあいだに楔状胸骨を滑り込ませてワイヤー2本にて固定する。したがってcosto-sterno complexは著しく上方へ転移し、いわば重畳引き上げ固定となる。各肋骨もしくは肋軟骨も第6肋骨(もしくは肋軟骨)を除いて、重畳固定するが、その際肋骨が上方へ引き上げられるように多少牽引する(したがって骨膜を剝離して肋骨の十分な可動性を得ておくことが肝要である)。胸壁前後径に左右差のあるものでは、より陥凹側の肋骨を十分に引き上げ重畳固定し、他側はあまり引き上げず単純な端端縫合とすることにより、左右の胸壁前後径の矯正を得る。胸骨裏面骨膜は、もとの胸骨に2~3針にて縫着し、また各肋骨および肋軟骨骨膜も相当する肋骨および肋軟骨に縫着する。とくに肋弓部分の骨膜およびXyhoidは確実に相当する部分に縫着する。これにより術後の腹直筋の弛緩を防ぐことができる。肋弓は突出していることが多いので、突出部位は切除もしくは骨折させ、十分に縫縮気味にcosto-sterno complexの相当する部位に端端縫合する。
胸骨上に特続吸引やhemovacなどの陰圧ドレーンを1~2本挿入し、左右胸筋を縫着してのち、皮膚を閉鎖する。

b. 考案

漏斗胸に対する外科的治療の目的は、まず心臓、肺などの胸腔内蔵に対する圧迫解除である。単に陥凹部の是正だけでなく、その原因もしくは結果として生じる脊椎の後彎、側彎、胸腔前後径左右差、肋弓突出、腹部膨満など胸壁全体の形態異常の是正であり、さらにこれらの副次的効果として美容面、精神面に好影響を与えることなどを目的としている。上記の目的をよりよく実現する手術術式としては、1回の手術で、シーネやstrutなどの異物を使用せず、正常に近い胸壁の全体像が再構成され、しかも再発しない方法が必要である。和田らにより開発されたSTOはこれらの要請によく応えうるものであり、すでに十分な実績を績んでおり、長期遠隔でも良好な成績で、飜転胸骨の生存も確認されている。
著者らの開発した新術式、modified STOは、このSTO原法の実績の上に、より理想的な全胸壁再建を追求したものである。modified STOの特徴の1つである胸骨および肋骨などの重畳引き上げ固定は、胸壁前後径を増し、上胸部陥凹遺残を防ぎ、さらに前胸部に生理的なふくらみをもたせることを目的としている。STO原法では胸骨、肋骨(もしくは肋軟骨)とも端端縫合であり、和田分類Ⅲ度~Ⅳ度の漏斗胸では陥凹が遺残してしまう。その理由は、立位では後彎がありほとんどの症例で第2肋間ですでに陥凹が始まっているのに、手術台では仰臥位で後彎が軽減するため、前胸壁は浮き上がり陥凹起点はより下方にあると誤認し、結局陥凹部位での胸骨縫合となってしまうためであり、また術後しだいに前胸骨縫合部が後彎などのために再陥凹するためである。したがってmodified STOではみかけの陥凹起点とは無関係に胸骨切断は第2肋間以上としている。
胸骨重畳は再陥凹を防ぎ、第2肋間で胸骨を切断した場合には引き上げにより、第2肋骨に第3肋骨が重畳した形となり、上胸部はむしろ前方にふくらみをもった形となる。
一般に漏斗胸患者では胸部X線側画像において、各肋骨および肋軟骨は最陥凹部に向かって牽引された形となっており、脊椎後彎と同時に肋骨の下方走行が著明である。STO原法では肋骨と肋間筋が一体となっているため、この肋骨の下方走行は是正されず、これが胸壁扁平化の一因となっている。
modified STOでは、一度この肋骨と肋間筋の関係を断ち切り、肋骨に自由な可動性をもたせたうえで、これを上方に牽引するため胸部X線側画像での肋骨の下方走行が十分に是正され、その分胸壁前後径が増大する。すなわち術後の扁平化を防ぐため、胸骨、肋骨(もしくは肋軟骨)を重畳すると同時に肋骨走行を前方へ持ち上げるという2つの矯正が必要である。最陥凹部へ向かっての肋骨および肋間筋などの集中は脊椎への無理な牽引を生じていると思われ、脊椎後彎、側彎の一因であると考えられるし、また逆に後・側彎が胸壁陥凹の原因となっている可能性も考えられる。肋骨、肋間筋、胸骨、腹直筋など最陥凹部を取り巻く周囲組織の緊密な関係を十分に断ち切り、肋骨の可動性を十分確保したうえでの胸壁再構成は脊椎後・側彎の解消に意味があると思われる。事実modified STOでは術後有意に後彎が軽減されているが、STO原法では、むしろ後彎の増強が認められた。胸壁前後径左右差のある場合、より陥凹側を重畳引き上げ固定し、他方はあまり引き上げず、したがって肋骨走行を前方に持ち上げず端端縫合することにより良好な結果が得られる。
modified STOでは胸骨、肋軟骨、肋骨の裏面骨膜はそのまま温存されており、これらを再建された肋骨や肋軟骨に縫着するため、縦隔に十分なスペースができ、また縦隔へ浸出液が貯留することもなく、心臓、肺などへの圧迫はSTO原法よりも十分に解除される。したがって心臓の右方への回帰は原法よりも早い。また肋間動静脈、肋間筋、内胸動静脈、浅腹壁動静脈などの軟部組織はすべて温存されており、この部のen bloc resectionを旨とする原法との大きな違いであり、栄養不良による合併症は考えられない。


STO原法では上記血管の血行遮断によりcosto-sterno complexに十分な栄養供給がなされないにもかかわらず、術後10年の遠隔において、十分胸骨が代謝系にあることが確認されている111)。したがってmodified STOでは、各角膜、内胸動静脈、肋間動静脈、浅腹壁動静脈、肋間筋など、前胸壁のほとんどすべての組織が矯正位置にて温存されているため矯正部の骨新生が十分期待される。この場合のcosto-sterno complexは生体の自己strutとしての作用を果たすことになり、STO原法とはその意味を異にしている若松、平山ら112)はSTO原法に加えて内胸動静脈吻合を行なって、costo-sterno complexへの栄養補給に意を用いている。また秋山ら113)は腹直筋有茎性STOを施行して、やはり再建胸壁への栄養供給を心がけているが、modified STOとの比較において、その手技の繁雑さに加えるには得られる効果は不明である。このようにmodified STOはSTO原法から発展し、生理的、理想的な全胸壁再構成を目的としたものであり、今後とも正常人との胸壁骨格系の厳密な比較検討を積み重ねて、さらにmodifyされてゆくべきである。教室の最近の努力により、modified STOをさらにmodifyしたSTO-Oが広く行なわれるようになってきた。STO-Oはmodified STOに比べ、術式の簡略性、手術時間の短縮およびSTO原法の精神により近いことなどにより、すぐれた方法であり、今後のSTOの主流と思われる。
STOのみでは上胸部の扁平が進行することが多い。STOによって、剣状突起部の最陥凹部は修復されるが、上胸部に陥凹が再発しやすい。このSTOの欠点を解決したのがSTO-Oである。最後のOはoverlappingの意である。胸骨(プラストロン)を患者胸骨と重畳することにより、上胸部の陥凹を予防することができる(図Ⅰ-118~Ⅰ-120)。(日野 恒和)

20. 手術後の遠隔成績調査

手術治療を受けたあとの患者をfollow upすることは、手術方法の是非を検討するうえからも重要である。外科医は手術直後の患者の状態に接することは多いが、手術遠隔期の状態に接することは比較的少ない。
漏斗胸手術、鳩胸手術などは、5年後、10年後の患者の状態が大切である。遠隔地の患者も多いので、われわれはアンケートによる調査を試みた。

a. 方法と対象

1978年以来、当教室において、胸部変形疾患約1,500例に対し、外科治療を行なってきた。このうち、追跡できる1,172名の漏斗胸患者に対しアンケート調査を行ない、外科治療を受けた患者側の満足度、漏斗胸の前胸壁陥凹による種々の内部臓器の圧迫症状、精神的コンプレックスなどにつき調査を行なった。1,172名のうち、資料として使用可能であった674名の返信にて検討を加えた。
674名のうちSTO(胸骨飜転術)を行なったもの216名、STO-O(胸骨飜転術+ovevlapping)を行なった者95名、costal plastyのみを行なったもの15名、SCE(胸骨肋骨挙上術)を行なった者338名に分け比較検討した。

b. 結果

質問内容とその結果は下記のようであった。
(1)手術前にあった「風邪をひきやすいという体質」が術後改善したかどうか(表Ⅰ-38)。
漏斗胸に、上気道の反復する感染症は、高率に合併して、674名中372名(55%)にも認められた。これは、外科治療により前胸壁の陥凹を修復することにより、著明に改善する。改善は、372名中298名(80%)に認められた。各術式間に有意差はなかった。

(2)「息切れ」、「呼吸困難」という症状がどのように変化したか(表Ⅰ-39)。
息切れ、動悸といった症状は、674名中158名(23%)に認められた。これらの症状も、手術により82%と著明に改善が認められた。
(3)「姿勢の悪さ」、「猫背である」という訴えがどのように変化したか(表Ⅰ-40)。
姿勢の悪さ、猫背などといった症状は、漏斗胸に特徴的な、straight back syndrome、側彎症と密接な関係にあるが、これは674名中372名(57%)に認められた。しかし、手術による改善度は、他の症状に比し低く126名(34%)にのみ認めた。各術式による有意差はやはり認めていない。

(4)「疲れやすい」「易疲労感」という症状がどのように変化したか(表Ⅰ-41)。
易疲労感は、674名中307名(46%)に認められ、これは術後198名(65%)とやはり高率に改善を認めた。
(5)「喘息」「ぜーぜーする」という症状がどのように変化したか(表Ⅰ-42)。
呼吸器系症状において、喘息という合併症は674名中146名(22%)に認められた。術後における改善率は66%と高い。われわれは種々の内科的治療に抵抗する喘息が、手術を契機に消失するのをしばしば経験する。
(6)「胸痛」、「胸部圧迫感」という症状がどのように変化したか(表Ⅰ-43)。
漏斗胸において、胸痛、胸部圧迫感の出現する頻度は低く、374名中79名(12%)にのみ認められたにすぎない。これもまた術後は著明に改善する。術後の改善度は68%であった。
(7)「内気である」「ふさぎこむ」「気おくれがする」などという症状がどのように変化したか(表Ⅰ-44)。
忘れてならないのが前胸部陥凹が及ぼす精神的コンプレックスであるが、674名中上記症状を訴えた者が207名(31%)にも及んだ。術後の改善率は63%であった。

(8)手術の結果に関し、「満足度」はどうか。
満足度をA~E(表Ⅰ-45)の5段階に分け、手術を受けた本人、家族に対して質問した。
本人、家族ともにSCEが他の術式に比し大変満足と記したものが多い。本術式が主に15歳以下で、骨性胸郭の比較的軟らかい症例のみに行なわれたためかもしれない。
この点をさらに検討するため、本教室において、昭和57年以前に行なわれた13歳以下のSTO症例にかぎった統計をみると、表Ⅰ-46のようである。すなわち、これはSTO全体(全年齢層)と比較し、有意差をみない。
これに反し、大変満足と解答したものの数は、本人・家族ともに、有意差をもってSCEに多かった。
(9)不満足、大変不満足という答をした患者・家族の数は表Ⅰ-47のようである。これらの患者に、何が不満足かという質問を行なって解答を得た(表Ⅰ-48)。

c. 考案

漏斗胸による前胸部陥凹のためと思われる内部臓器(主に心臓、肺)の圧迫は、胸部CT、気管支鏡、心臓カテーテル検査、心血管造影などで明らかである(くわしくは各項を参照)。今回のアンケートにおいて、それらによると思われる代表的症状6症状について質問したが、姿勢の悪さ(猫背)を除きどれも手術がきわめて有効であり、術後症状の著明な改善を認めている。また、各術式間において、それぞれの改善度の相違は認められなかった。
満足度ではSCEが有意差をもって多いが、これは年齢が小さいためだけではない。本術式は美容上もすぐれているものと考えられる。
不満足原因の分析であるが、もっとも多いのが傷の盛り上がりである。この治療には時間の要素が必要であり、1~2年で完治を期待する家族と意見があわないためかもしれない。医師はもっと傷のなおり方について患者に説明する必要があろう。
傷の盛り上がりをケロイドというが、これは俗名であり、一般にはケロイドではなく、hyperscarである。これを短期間になおそうとせず、2~3年は経過をみ、その後ステロイド剤などの注射を行なうのがよい。
一方、hyperscarの予防には、傷を3か月間くら圧迫することがよいといわれている。
傷はなるべく短いほうが満足度も高い。10歳以下のSCEなら数cmで手術できるようになったので、今後の患者の満足度はもっと向上するものと予想される。(笹生 正人)

21. 東女医大の変形胸郭疾患統計

東医大においては昭和53年より漏斗胸手術を始めた。昭和61年8月31日までに1,654例の手術症例を経験した。

a. 性別

変形胸郭疾患の手術症例1,654例のうち、男は1,267例、女は387例であった。
その性比は76.6:23.4の割合で男に多い。各年度別の性比は表Ⅰ-49のようである。

b. 手術症例の術式別分類

1,654例のうち、胸肋挙上術が699例、胸骨飜転術が892例となっている。SCEは1981年より始められている。現在では主に15歳以上はSTO、15歳未満はSCEと区別して手術を行なっている(表Ⅰ-50)。

c. 手術術式の変遷

昭和53年から56年までは、手術総数の9割以上は胸骨飜転術であった。昭和56年頃より胸肋挙上術が始まり、現在では症例の6~7割は本法で行なわれている(表Ⅰ-51)。

d. 年齢分布

患者を5歳間隔で分類し、手術時における年齢分布を調べた。表Ⅰ-52より、15歳以下が70%以上を占めている。(横山 正義)


22. 肋軟骨移植に関する実験的研究

教室では漏斗胸の手術術式は、主として胸骨飜転術と胸肋挙上術を用いている114)。なかでも胸骨飜転術における移植片として胸骨および肋軟骨のその後の生着・吸収過程は、術式選択、長期予後の点でおおいに参考にすべきところである。中でも肋軟骨は、胸郭形成においてその占める役割は大きく、余剰の肋軟骨片を用いて小陥凹を補塡することも考えられ、すでに臨床面では頻繁に行なわれている。

a. 研究対象および方法

対象としてWister系ラット、生後6~8週の雌30匹を用い、エーテル麻酔下に自発呼吸のまま右側あるいは左側前胸部に横切開を加え大胸筋の一部を切開し、小胸筋を剝離し、第1群では上縁を露出。次に肋軟骨を約1cmにわたってその下縁を軟骨膜と肋間筋の間で剝離し、第1群では上縁を肋間筋につけたまま、約5mmの肋軟骨片を切離し胸郭側の双方の断端を可及的に接合密着させたのち、この上に肋間筋の付着した肋軟骨片を逢着した。小胸筋、大胸筋を縫合し、皮膚は真皮縫合を加えて縫合した。第2群では、肋軟骨片約5mmを軟骨膜を可及的に温存して遊離し胸郭側軟骨を第1群と同様に処理したのち、その接合部上に逢着した。なお、術野および創部に対するドレナージは施行しなかった。
このうち生存した18匹について、それぞれの群から術後10.20.30.50日目に屠殺し、前胸壁を大・小胸筋、肋間筋、胸骨、肋骨を一塊として切離、これを10%ホルマリンにて約一週間固定後、超軟線X線撮影、さらに薄切組織標本を顕微鏡下に観察し検討を加えた。

超軟線X線撮影では、Softex(MG-B)を用い35kV、0.8mA、90secの条件で、距離45cmとした。また、10%ホルマリン固定後脱灰操作を型のように行なった組織標本は、厚さ3μmの切片とし、hematoxylin-eosin染色、alcian-blue染色を施し、それぞれ軟骨細胞、軟骨膜、軟骨基質などを中心に両群間で比較検討した。

b. 結果

(1)術後各期間における移植片および周囲組織の変化(組織学的検討)(表Ⅰ-53、図Ⅰ-121A、図Ⅰ-122A、図Ⅰ-123A、図Ⅰ-124A)
(2)超軟線X線撮影による検討(図Ⅰ-121B、図Ⅰ-122B、図Ⅰ-123B、図Ⅰ-124B)

c. 考案

胸郭変形、なかでも陥凹型胸郭変形(漏斗胸)の手術治療においては、肋骨走行の矯正、胸骨の部分的変形の修正、余剰肋軟骨の切除、肋軟骨彎曲の矯正など、術後満足すべき胸郭形態を得、ときに胸腔内臓器への圧迫を解除するためにはさまざまな因子に対して適切な処理を必要とする。


漏斗胸を矯正しようとする場合、ほぼ全例において肋軟骨の余剰が認められる。いずれの術式においても肋軟骨部において胸骨と肋骨を分離し肋軟骨部を形成しなおして縫合固定することになるが、このとき肋軟骨を一部切除して端端縫合する際、それぞれにおける血行、あるいは手術侵襲による変性などは問題となることが少ないように考えられる。しかしながら、背後の胸郭形態をさらによくするためには肋軟骨を2か所以上、数か所において切離あるいは楔形切除しておく必要もときとして生じてくる。またこのとき血行から遮断された肋軟骨片のその後の変化も問題となる。
過去、1917年のDavis115)以来、肋軟骨の遊離移植に関する研究が多く報告されているが、その成績では移植された肋軟骨は吸収されることなく生存し続けており116-118)、中には移植片中心部に石灰変性あるいは石灰化傾向を認めたものもある119)。
われわれが臨床上経験する漏斗胸再手術において、肋軟骨膜を一部剥離したり、あるいは周囲の肋間筋など血行および血液成分拡散の供給源から分離された肋軟骨は、年齢に比して高度の加齢性変化類似の変性をみせる。すなわち健康な肋軟骨にみられる白色半透明で弾性硬の構造は消失し、粗な結晶構造をもつガラス細工のような印象を与えるようになる。さらに、再手術時の肋軟骨は弾性がほぼ消失し、硬度も増加して容易に折損する。このことは、肋軟骨が胸郭の一部を形成し、胸郭はつねに運動するとともに外部からの過度の圧迫に曝されることを考えれば、軽視すべき問題とはいえない。軟骨の再生修復機構は、軟骨細胞と基質、さらにこれを取り囲む軟骨膜およびこれらに至る周囲からの血液成分の拡散によって営まれているが、周囲からの拡散を防げる因子が問題となる。1つは軟骨膜に至る血行であり、もう1つは、軟骨膜、軟骨細胞の代謝能力である。血行が完全に近く温存された場合、移植片の変化が最小となるのは容易に推測されるが、一方どこまで血行を遮断可能かという点にも関心がもたれる。
そこでわれわれは、前述のように完全に血行を遮断し、さらに周囲の肋間筋を剝離、一部軟骨膜をも切除した遊離移植群と、軟骨の片側に肋間筋を付着させたままの有茎移植群との間にどのような差が生ずるかを実験的に比較検討してみたのであるが、結果的には、全体としての両群間に著しい差を見出すことはできなかった。しかしながら、組織学的検討では、有茎移植群は、遊離移植群に比して軟骨小腔内の軟骨細胞の大きさ、数および軟骨細胞の活性を表わすと考えられる諸点において優位に立っており、また同様に軟骨膜内の芽細胞数においても優位性を示していた。また、もっとも著しい差を認めたのは移植軟骨部における軟骨の増生ないし再生においてであり、遊離群ではまったく認められなかったものが、有茎群では全例に認められた。
これらを総合してみると、血行温存がもっとも有利であるが、たとえ領域の分布動脈を遮断しても血漿拡散路としての周囲組織を温存することも有利に働くと思われる。また、軟骨膜の存在も重要で、軟骨膜単独での造骨能も認められており120.121)、われわれの実験においても移植片の断端すなわち軟骨膜の欠落した部分では軟骨細胞、基質ともに減少し、細胞の浸潤による破壊も認められた。また、胸郭側軟骨断端および軟骨どうしが接触した部分では軟骨膜の肥厚と芽細胞の増生も認められ、遊離移植片も縫合方法によっては有茎移植片と同様の再生能力をもつ可能性がある。
以上より、STO、SCEなど、軟骨部分に対してなんらかの障害をひき起こしたとしても、軟骨膜温存がある程度の支持的役割を担っていると考えられる。

d. まとめ

(1)適齢5~7週のWister系ラットを用いて自家肋軟骨移植を試みた。
(2)移植は、軟骨膜を温存あるいは一部切除した遊離群と、肋間筋を付着させたままの有茎群の2群とし、それぞれ移植後10.20.30.50日で屠殺し、組織学的およびX線学的検討を行なった。
(3)有茎、遊離群ともに50日目においてもその基本構造は保たれていた。
(4)有茎群では遊離群に比して軟骨細胞の活性がより高いと思われる所見を得た。
(5)軟骨膜を温存すれば胸郭形成時、軟骨小片による微小変形修正も有効と思われた。 (貝塚 秀樹)

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