1 | 症例は22歳男性。3ヶ月前に他院で第4肋間、第5肋間に2本のバーを用いたNuss法を施行した後、疼痛著しく来院。当院で行っている鎮痛剤等の薬物療法を1ヶ月間施行したにも拘わらず疼痛持続、2本のバー抜去と共に筋層下Nuss法を用いた再手術を施行し、疼痛改善したので報告する。 |
2 | 前回の手術創に皮切を加え、BIOMETのバーに達し、六角レンチでスタビライザーを緩めて取り出した。 |
3 | 同様の操作を4ヶ所の皮切部に行った。右側下方、右側上方、左側下方、左側上方の順に行った。 |
4 | 六角レンチでネジを緩めてスタビライザーを取り出している。 |
5 | ハンドベンダーでバーを平坦にした。 |
6 | バーに糸を付けて、バーを抜去した。スタビライザーを取り外せない部分は、スタビライザー側より創外に引き抜き抜いた。 |
7 | バーで圧迫されていた大胸筋は萎縮していた。 |
8 | バー抜去後、第4肋間にケリー鉗子を挿入し、テープを導いた。 |
9 | テープで胸骨挙上用バーを導いた。 |
10 | ヨット用シャックル・鎖・カラビナでエンジンジャッキに繋ぎ、前胸部挙上を行った。 |
11 | 第5肋間に胸骨挙上用バーを挿入し、エンジンジャッキで前胸部挙上を行った。 |
12 | 第5肋間に テープで33 cmのバーを導き、イソジン塗布後Pectus clampで180度回転させ、固定した。 |
13 | 次いで第4肋間にケリー鉗子でテープを通し、テープで第4肋間にバーを導き、Pectus clampで180度回転させた。 |
14 | Deschamps動脈瘤針でTevdek2糸をループ状に右第5肋骨と第4肋間のバーにかけた後、これを倍々にして4本の糸でそれぞれ肋骨に固定した。 |
15 | BIOMETが入っていたトンネルに残した糸で導き、3.5mm径のシリコンドレーンチューブを留置した。 |
16 | 筋層・皮下組織・皮膚を縫合して、上方のバーの創部を閉じた。右側、そして左側と縫合閉鎖した。 |
17 | 直径5mmのsilicone drainage tubeを筋層下及び胸腔内を兼ねて挿入した後、筋層を閉鎖。 |
18 | 0.5%マーカインによる局所麻酔を行い、皮下組織・皮膚を縫合して、手術を終えた。皮切部にはステリストリップを貼付した。 |
19 | 術後疼痛は、一般の漏斗胸術後同様、殆ど認めず。術後約2ヶ月目、仕事復帰。 |
20 | 術前後の写真。 |
21 | 術前後の胸部X線撮影、正面像。 |
22 | 側面像。 |
23 | 術前後の胸部CT。 |
24 | 術前後の胸部CT矢状断。 |
25 | 術前後の右冠動脈造影。 |
26 | 術前後の心エコー。 |
27 | 術前後の胸部MDCT。 |
28 | 当院手術後におけるCTで胸骨・肋軟骨関節の骨折を認めた。 |
29 | 【考察】成人漏斗胸症例のNuss法術後、陥凹していた肋軟骨は常に伸展された状態となり、術後疼痛は持続する。演者の筋層下Nuss法は、術中に前胸壁挙上法を用い、肋軟骨・胸骨関節、肋骨・肋軟骨接合部を骨折させた後バーを挿入して固定する事により、疼痛は術後一時的であり、持続することは無い。 |
30 | 【結論】成人の漏斗胸症例には、前胸壁挙上法を行い骨折させた後に筋層下Nuss法を行う事が勧められる。 |